2018.06.03 Sunday

バレエ三昧の季節(最終回): 「リーズの結婚」他

 

がさがさ懸命に生きていたらもう6月で、

今年も残すところ半年になってしまった。

仕事に集中していると家を出るのが億劫になり、

レッスンに行くのは4、5、6月限定月謝制で毎週水曜受講の

「ドン・キホーテ」パ・ド・ドゥWSがメインになってしまい、

Angel R(こちら→)の月16回チケットの消化は下旬になだれ込み、

月末だけ大忙しで踊っている。

 

それでもバレエ鑑賞は仕事の一貫だから、観るべきものは観る。

前回書いた「ヌレエフ・ガラ」の後、5月の残りは

13日(日)、スターダンサーズ・バレエ団「ドラゴンクエスト

 @テアトロ・ジーリオ・ショウワ

30年以上も前の我が国の大ヒットゲームをベースに、

20年以上も前に作られ、上演され続けている日本製のバレエだ。

お話はゲームからきているのでわかりやすい。

プリンセスと二人の騎士の三角関係に、悪と善の闘い、

ワイルドなダンスの見せ場も絡み、結婚式でお目出度いエンディング。

西洋古典バレエの構成パターンをオーソドックスに踏襲した作り方だ。

2017年から装置・衣装を一新したそうで、幻想的かつ近未来的で効いている。

モンスターが可愛く、剽軽で、会場でお子達の笑い声が沸き起こっていた。

 

(左)「ドラゴンクエスト」 (右)「眠れる森の美女」のプログラム

 

18日(金)、英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団「眠れる森の美女

 @東京文化会館/「眠り」はいろいろ観ているが、

バーミンガム自体の公演を観るのは初めてだし、新国立劇場バレエ団の

前・舞踊芸術監督だったデヴィッド・ビントリーが率いるバレエ団で、

加えてアリーナ・コジョカルのオーロラ姫は観ておくべきだろう、

と思って行ったのだが、私的には全盛期の吉田都のオーロラが好きすぎて、

ちょっと? という感じだった。誕生日のローズ・ヴァリエーションで

ピルエットを4セットするシーンがあるが、都さんはセットごとに

二回、二回、二回とピルエットを入れていき、最後の4セット目では

氷上の演技であるかのようにスルスルと5回転こなして

スルリとストウニューで締める。(こちらのYoutube 1:47〜→)。

コジョカルさんは最多2回なので肩透かしを食ってしまった。

わたしが篤い拍手を送ったのは、カラボス役の佐久間奈緒で、

強烈に個性的なカラボスを演じ踊っていた。

 

25日(金)、同じくバーミンガム「リーズの結婚」@東京文化会館

ヴァリエーションの踊りはAngel Rのクラスでも経験して知っているが、

全篇を観たことがなくて、是非ともと思って足を運んだら、

すごく良かった! 農村の若い男女を巡るコミカルなラブストーリーで、

金持ちのおバカ御曹司や着ぐるみのニワトリたちが楽しい。

ニワトリの踊りはユニークだし、リーズの母親で未亡人の

シモーヌが木靴でタップして踊るクロッグダンスは特筆に値する。

恋人同士がリボンを持って踊るうちに綾取り図形ができるのも新鮮な驚き。

リーズ平田桃子が恋人コーラス(マチアス・エイマン)の片掌に腰かけ、

高々とリフトされる「お尻のリフト」なんてビックリ仰天ものだった。

「リーズの結婚」は現存するバレエ作品では最も古く、初演はフランスの

ボルドーにて1789年(受験で覚えた「火縄燻る」だからフランス革命の年!)。

これが各国で振付、音楽など改訂に改訂が重ねられ、上演され続け、

英国の振付家フレデリック・アシュトンの究極的新改訂版が世界初演されたのが

1960年で、それを今回、わたしは東京文化会館で鑑賞したというわけだ。

ヨーロッパ各地の庶民の踊りや生活風情が織り込まれ、主人公は愛すべき農民。

これがわたしの琴線に触れるのだ。革命に立ち上がった一般市民が

織りなすバレエ「パリの炎」で血湧き肉踊ったのもそういうことだった。

生きているバレエって、そういうものなんじゃないだろうか。

リーズ役の平田桃子さんは小さくて可愛くて表現力のあるプリンシパルだ。

ところでもうひとつ心惹かれた要素がこのバレエにはある。

小さな馬車を引く小さな真っ白なポニーが二度出てくるのだが、

これがたまらなく可愛くて、登場・退場で思わず拍手を送ってしまった。

着ぐるみじゃないですよ、ちゃんと生きてるポニーです。

 

(上)「リーズの結婚」プログラムでお尻のリフトが掲載されてる頁

(下)「Woman of the Year」のフライヤーで、左端手前が宮尾俊太郎。

 

6月に入り、1日(金)には元宝塚歌劇団雪組トップ早霧せいなの退団後

初主演ミュージカル「Woman of the Year」@TBS赤坂ACTシアターで観た。

なぜに突然ミュージカル? と思われるだろうが、Kバレエ カンパニーの

プリンシパル宮尾俊太郎が亡命ロシア人ダンサーの役で出演しているからだ。

バレエダンサーがバレエ以外で仕事をすることに個人的関心があり、

宮尾さんの場合は役者としてはどうなんだろう、と興味津々なのだが、

これがけっこう堂に入っており、がたいがいいし、姿勢もびしっとしているので

舞台に登場しただけで、もうひと際目立って、絵になるんですゎ。

台詞回し、演技もナチュラルで、かつ持ち前の飄々としたコミカルキャラ全開。

バレエもばんばん踊ってくれるし、いまチャイコで入稿準備中の翻訳小説にも

亡命ロシア人ダンサーが出てくるので、対比しつつ感情移入しながら観ていた。

このミュージカルは大物女性ニュースキャスターの恋の行方についてのお話で、

ブロードウエイ初演は1981年。アメリカ的で派手で賑やかな舞台──

梅雨の季節のステキな幕開けとなりました。

 

 

 

 


2018.05.27 Sunday

バレエ三昧の季節 そのNBAスタジオリハ見学

 

今週25(金曜)は新所沢のNBAバレエ団に出向き、

6月公演「Short Stories 9 – BALLET INCREDIBLE」(→こちら)

のスタジオリハーサルを見学した。

ファンクラブのプレミア会員(→こちら)のための特典ご招待で、

またとない経験をさせていただいた。

 

 

「ショート・ストーリーズ 9 ─バレエ・インクレディブル」は

NBAがこれまで上演してきた作品の中でも飛び切りの十八番、

ともいうべき作品7編:

 『スターズ&ストライプス』より パ・ド・ドゥ

 『ガチョーク賛歌』より 性トリオ

 『ケルツ』 全篇

 『ロミオとジュリエット』より パ・ド・ドゥ

 『ザ・リバー』より ボーテックス

 『海賊』より パ・ド・トロワ

 『ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第一番全篇

これに振付家兼ソリストの宝満直也による新作11匹わんちゃん』

プリンシパルの佐藤圭も振付に挑んだ新作La Vitaが入っている。

ファンにとっては文字通りIncredible(まじ、すげえ! の意)な贅沢さだ。

 

スタジオリハでは、ガチョーク、ケルツ、ブルッフ(部分)、La Vita

11匹わんちゃんを見せていただいたが、普段の稽古場の至近距離で

ダンサーたちがパワー全開で踊っているのを観るのはすごい迫力だった。

新作は(当然)観たことがないので興味津々だったが、

La Vitaは美しく長い腕脚を持つ佐藤自身によるソロで、

儚くもたおやかにして生命力溢れる神羅万象の輪廻を体現している。

衣装がどうなるかが楽しみだ。

宝満の11匹わんちゃん』は、意表を突いたオトナなコンセプトで、

ダンサーに高度なテクニックと激しい動きを要求している。

「衣装は着ぐるみですか?」の声が見学ファンから聞こえていたが、

「本番を乞うご期待」と、思わせぶりな振付家のご託宣だ。

 

芸術監督の久保綋一は新しい振付家をどんどん起用していく戦略で、

著書『日本バレエを変える ─コーイチ・クボの挑戦―にもあるように

まず自分のバレエ団NBAの変革を推し進めている。

毎年怒涛のように押し寄せてくる海外バレエ団の日本公演に負けず、

張り切ってもらいたい。だから応援を続けている。

 

公演は6月151617日、全4回公演@彩の国さいたま芸術劇場だが、

ゲットしてあるチケットは15日の昼・夜で、キャスト替わりを楽しむつもり。

個人的には大好きな『ケルツ』と『ザ・リバー』を堪能すると同時に、

衣装・照明ありでの新作本番お手並み拝見といったところだ。

 

話しは変るが、最近、銭湯に行っている。

仕事で硬くなった脳味噌をふやかすのと同時に、

バレエのレッスンで硬くなった筋肉をほぐすことができる。

なんと、この南青山に、100年続く銭湯があるのだ!

「清水湯」という。

 

「清水湯」は港区南青山3-12-3 直近は表参道駅A4

 

一年程前に知り合いがFBでアップしていたので知ったが、

実際行ってみると、ほんと、結構な銭湯で気持ちがいい。

浴室の水は軟水で、3種類のジェットバス、水風呂もあり、

高濃度炭酸泉(炭酸ガスが細かい気泡で溶け込んでいるお湯)

シルク風呂(お湯に微細な空気の泡を混合させいる真っ白なお湯)完備。

銭湯で湯上りといえばこれでしょう、とばかりにコーヒー牛乳を飲み、

ついでに北海道豊富牛乳使用のアイスクリームをいただく。

すんごくし・あ・わ・せ!

 

 

 


2018.05.22 Tuesday

バレエ三昧の季節 その 屮魅譽┘奸Εラ」など

 

遅れている次の本の作業が大分整ってきたので、

2ヵ月も休載状態だったブログを書く余裕も出てきた。

忘れないうちに、まず3、4、5月に観たバレエ作品について──。

 

3月14日(水)バレエフレンドK子さんと観た

ボリショイ映画「ジゼル」@TOHOシネマズ新宿:

  ポルーニンのアルブレヒト狙いだったが、私感では、

彼の容姿は軟弱な貴族向きではなく、ザハロワは

いつもながら美しいが、このジゼルにはいささか薹が立ちすぎ。

最近のわたしは、西洋人で頭小・腕脚長いダンサーだからステキ、

とは思わないので、鑑賞の仕方が難しい。

 

3月25日(日)一般社団法人現代舞踊協会主催の現代舞踊名作劇場

       @彩の国さいたま芸術劇場大ホール:

 日本のバレエ史の研究のためにどうしても観ておきたかった公演だ。

石井みどり作《体 ─たい─》(1961年初演)

江口隆哉・宮操子作《プロメテの火 ─全景─》1950年初演)。

西洋からバレエが入ってきて、先人たちはその洗礼を受けたが、

ある時点でバレエから離れ、現代舞踊のパイオニアとなった人たちが日本にはいた。

その流れから出て来た舞踊家の代表例が石井みどりであり、江口・宮夫妻だ。

日本のバレエの今後を考察するには欠かせない人たちであり、作品である。

個人的に琴線に触れたのは《体 ─たい─》で、

音楽がストラヴィンスキー「春の祭典」のせいかもしれないが、

群舞ダンサーたちの驚くべき身体能力が音とマッチして圧巻、現代的。

振付、舞台展開も秀逸で全然古くない。

 

(上)指揮者・作曲家の近衛秀麿が戦前、ドイツから持ち帰った「春の祭典」の楽譜。

(下)劇場ロビーに飾られていた昔の「体 ─たい─」の舞台写真と、晩年の石井みどりさんのポートレイト。

 

4月18日(水)ボリショイ映画「パリの炎」@TOHOシネマズ日本橋:

 「パリの炎」は昨年6月のボリショイ・バレエ団来日60周年記念公演の

プログラムに入っていたが、観逃していたので、映画が来てラッキーだった。

フランス革命のときの市民たちが闘う姿をバレエ化したもので、

お姫様だの妖精だのという夢の世界ではない、地に足がついた内容、

それをバレエで力強く踊って表現するのだから、これはもうわたし好み。

キーロフ・レニングラード・バレエ団がワイノーネン版を1932年に初演、

ボリショイ劇場では1933年に上演されたというが、

日本ではコンクールでパ・ド・ドゥを見かけるぐらいなので、

一体全幕はどういうストーリーなのだろうと気になっていた。

今回のはボリショイのラトマンスキー芸術監督の台本・振付による、

衣装も装置も刷新されたニューバージョンで、2008年に初演されたという。

だからなのだろう、クランコ的というか、ノイマイヤー的というか、

ダイナミックでドラマチックで斬新なのだ。それでいて、

革命がもたらす人間の希望、悲哀、エネルギー、未来をうまく描いている。

 

月が替わって、5月9日(水)ウィーン国立バレエ団の

ヌレエフ・ガラ」@Bunkamuraオーチャードホール:

今回の来日公演には「海賊」もプログラムにあったが、

3月にNBAバレエ団のを観たばかりだったし、

ヌレエフ・ファンとしては当然、ガラを選んだ次第。

 

(左)売り場にあったパネル。(右)プログラム。表紙がベージュに金の飾り罫でとても上品。

 ルグリ版「海賊」の解説、本人のロングインタビュー記事が読み物のようで充実している。

 

このバレエ団の芸術監督は元パリ・オペラ座エトワールで、

いまでも日本で人気のある54歳のマニュエル・ルグリ(就任2010年〜)

彼は駆け出しの頃、パリオペ芸術監督だったヌレエフに目をかけられ

大抜擢を受け、今日自分があるのはヌレエフのおかげ、として

毎年、オマージュとしてこのガラを上演している。

 

前半はバランシン《ワルツ・ファンタジー》(1931年初演)を除けば、

11作品が20世紀後半から21世紀に入って作られたもので、

ヨーロッパのバレエの進化、変貌の方向を示唆している。

ルグリは2020年に芸術監督の座を退くと公表しているが、

退任までにこのバレエ団をさらに大きく育てておこうとしているのか、

そんな彼の真摯な意気込みが感じられるラインアップになっている。

強烈に印象的だったのはノイマイヤー振付《『ヨゼフの伝説』より》と

ダニエル・プロイエット振付《シーニュ 白鳥》。

前者はヨゼフ役のダンサーが全裸に近い姿で美しく衝撃的に踊り、

後者は環境破壊された21世紀の地球の“瀕死の白鳥”とでもいうか、

顔は白塗り、真っ赤な紅で大きく裂けたような口を描いたバレリーナが、

奇抜なデザインのチュチュで、半身不随、腕脚骨折、全身麻痺のように

バランスを崩して、苦しみ、もがき、踊るのが奇妙に感動的で胸を打つのだ。

ルグリ自身はプティの「《ランデブー》より」と

ノイマイヤーの新解釈による「《シルヴィア》より」を踊り、

ひときわ大きな拍手喝采とブラボーを浴びていた。

なんだろう、日本人はほとんど彼を愛して離さない、といった感じだ。

 

後半は、[ヌレエフ・セレブレーション]と謳った

ヌレエフ振付全幕物からの抜粋上演になっていた。

『くるみ割り人形』『ライモンダ』『白鳥の湖』という並び。

日本人ダンサーの橋本清香(プリンシパル)、芝本梨花子(アンサンブル)、

木本全優(プリンシパル)も生き生きと踊っていた。

ダンサーたちが踊っている間、終始バックの紗幕

ヌレエフの魅力的に柔和な表情の大きな顔写真が映し出され、

ルグリが育てた弟子たちを優しく見守っていた。

まるで慈母のような、すごく良いお顔をしたヌレエフなのだ。

 

ルグリが芸監に就任する前、ウィーン国立バレエ団にはソリストと

コール・ド・バレエしかおらず、主要な役は外からゲストを招いて

踊ってもらっていたが(日本のバレエ団にもその傾向がある!)、

彼はそれを良しとせず、団員にやる気を持たせ、競って成長させるために

ヒエラルキー制度を構築し、踊れるプリンシパルを育ててきたという。

今回の公演は、その成果を日本のファンに見せるためでもあったのだろうか。

ルグリにとって、これが在団中の最後の日本ツアーになる。
 

 

* 5月のバレエ鑑賞はあと3つあるが、そろそろまた仕事に戻らなければならないので、

     次回のことといたします。

 

 

 

 



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