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2019.02.06 Wednesday

熊川哲也の「第九」にブラボー!

 

1月18日、亡き母の四十九日と納骨を済ませた。

以来、滞っていた仕事や家事を片付けているが、喪失感からか、

人生観の変化のせいか、単に自分が年とったためか、

遅々として進まない。

 

バレエには安息日の日曜を除く毎日、マシンピラティスには週一、

規則正しく通っている。おかげで軸ができて体幹がしっかりしてきた。

毎日炭水化物は玄米ご飯1膳にしているのに体重が1.5キロ増えたのは、

脂肪より筋肉が重いからで、踊りやすい体になってきた。。

 

1月に入ってから、母の不在を意識しないよう、努めて外出をした。

ありがとう! 西城秀樹展 〜ミスターフェスタ 永遠に〜」が

静岡市で開催されていたので発作的に東海道新幹線にとび乗った。

現役のときに一緒に仕事をした森林写真家・石橋睦美さんの写真展

日光 聖域」を観に銀座のCANNON GALLERYにも足を運んだ。

280年の歴史を誇る「ロシア国立ワガノワ・バレエ・アカデミー」の

可愛く華やかな10代の生徒たちによる『人形の精』組曲と『パキータ』を

オーチャードホールで観賞した。大人になりきっていない、

細いラインの体で踊る若いダンサーたちは見るからに西洋人形だ。

月末にはゴールドジム恒例の発表会を中野ゼロホールで見た。

私も以前師事した元東京バレエ団ソリストの芝岡紀斗先生の作品で、

懐かしいバレエ友だちがまだ踊っていて頼もしかった。

 

(左から時計回りに: JR高尾駅最寄りのイタリアンレストラン「FUMOTOYA」で、四十九日法要の

帰りに食べた桑の葉と苺のジェラート。桑の葉は生まれて初めて口にしたが、ダイエット効果、

メタボ予防などになるそうだ/法要を行った高尾山中の料亭「うかい鳥山」の広大な庭/

日本の森の写真家・石橋睦美さん、日光の作品を背にして)

  

2月3日にはオーチャードホールでKバレエカンパニー

アルルの女」と「ベートーヴェン第九」を観賞した。

当日の「第九」は芸術監督・熊川哲也さん自らも踊るというので

大分前に狙ってチケットを購入していたのだ。

 

アルルの女」といえば、中学の音楽クラスで《メヌエット》を

リコーダーで練習した。それがローラン・プティ振付のバレエでは

若い男女の新婚初夜のシーンに使われていて新鮮だった。

結婚の喜びに浸る女、彼女との結婚に違和感を覚えて苦悩する男。

YouTubeパリ・オペのゲランとルグリのがアップされている(こちら→)

プティはおもしろい。諧謔的に人間の悲喜劇を映し出しているのだ。

この《メヌエット》のパ・ド・ドゥ、練習してみようかなぁ。

 

第九」は芸術監督演出・振付で、2008年が世界初演だった。

今回は4回目の上演になり、カンパニー設立20周年の節目に持ってきた。

4つの楽章からなるシンフォニックバレエで、わたしは初見だが、

熊川さんの構成力、想像(創造)力はさすがで、独特の世界観だ。

「クレオパトラ」同様、照明・装置含めて全体がアートになっている。

ご本人は《母なる星》と題した第四楽章で威風堂々と登場。

生命の行く手を指し示すリーダー、預言者的シンボル然として踊る。

微塵もぶれない軸、宙を裂くようなピルエットも健在だ。

オーディエンスの目が彼一点に注がれている。場内を支配する緊張感、

それをものともせず彼は踊る、神々しささえ漂わせて。

その存在感があまりにも大きくて、このバレエ団の中からは

彼を超えるダンサーは生まれないだろう──

そんな爛優ティブな期待感瓩気抱いてしまう。

 

母が亡くなってからというもの心が沈みがちで、バレエ音楽聴くのも嫌、

東洋人で姿かたちの美しい西城秀樹さんの歌を聴くほうが癒される──

 

 

(左から時計回りに: 西城秀樹展会場エントランスでファンたちを迎えてくれた等身大の秀樹さん

/ワガノワ・バレエ・アカデミーのプログラムは今年のカレンダーにもなっていて便利/Kバレエの

今回のプログラム。プリンシパル同士の荒井祐子さんと中村祥子さんの対談が充実している。

個人的には、荒井さんの気の強そうな、つりあがった目とメリハリのあるボディが好き)

 

そんな風に思っていたのだけれど、元気を取り戻しつつある今、

哲也さんの凛とした踊りを観て、バレエの素晴らしさを再認識している。

 

 

 

 


2019.01.03 Thursday

母のない子になったから

 

70年代にロックの女王と呼ばれ、一世を風靡したシンガーに

カルメン・マキという人がいる。わたしはマキさんのデビュー曲で、

大ヒットした「時には母のない子のように」が大好きだ。

Rock Side & アングラSide〜」http://carmenmaki.com/

その昔、同じことの繰り返しの単調な毎日に嫌気がさし、

日本にいるのも嫌になり、アメリカに行こうと密かに計画をたて、

学生ビザも取ってから、留学します、と両親に告げた。

そしたら亡き母が「親を捨てて行くのか?」と泣いたので、

なに、それ、大袈裟な、我が子がひとり立ちしようというのだから、

喜んで送り出すべきでしょうが、とあきれ果て、

その週末はふてくされて友人の館山の家に泊まりに行き、

夜の浜辺に坐ってマキさん気取ってひとり海を眺めながら

時には母のない子のように」を口ずさんだのだった(こちら→)。

 

なにかっこつけてたんだろう、といまでは笑ってしまうけど、

まあ、わたしはそういう親泣かせの娘だったし、

寺山修司の詞が当時の自分の気持ちをあらわしていて、

まとわりつくみたいな母の思いから早く自由になりたかった。

だから母を振り切ってアメリカに飛び出した。

長女だし、最初の子供だし、頼られていたのに──そしていま、

現実に母のない子になったわたしは、山の家でボーッとしてる。

ひとりになるとあの時の母の思いを静かに噛みしめる。

 

山の家のベランダから樹々の向こうの山肌のスキースロープを臨む

 

でも、四六時中そんな感傷に浸っているわけじゃない。

30日の「輝く!日本レコード大賞」は目的意識をもって見ていた。

昨年5月に63歳で亡くなった西城秀樹さんに特別功労賞が贈られるので、

信奉者としては、どんな放送のされかたをするのかが気になったのだ。

西城さんはこれまでに金賞と歌唱賞合わせて9回受賞しているが、

74年に歌唱賞を受賞した「傷だらけのローラ」、

78年金賞の「ブルースカイブルー」、83年金賞の「ギャランドゥ」が

動画メドレーで映し出され、とりあえず納得がいくものだった(こちら→)。

 

背が高く、四肢が長く、動いても静止しても絵になる本物のスター。

人の愛、喜び、哀しみを唄うために生まれてきた天才で、努力家で、

どんなジャンルも独自の感情移入で歌い、カバー曲の英語も流暢で、

脳梗塞と糖尿病がなければ、歌にも人間的にもこれからさらに、

いぶし銀のような魅力が増していくはずだった秀樹さん。

4歳上のマキさんは健在でまだライブで歌い続けているというのに……。

そしてわたしはマキさんの唄を聴きながらそっと涙ぐみ、

「お母さん、あの時はごめんね」なんてつぶやいたりできるのに……。

でも不思議だ。西城さんの歌を聴いていると悲しみが癒される。

CDDVDYouTubeのなかにいる彼が、わたしの救世主になっている。

Live

西城さんの闘病については未亡人の木本美紀さんによる著書

『蒼い空へ 夫・西城秀樹との18(小学館刊)に詳しい。

上は実家の近くにある小平キリスト教会。

青空に映えていたので思わずシャッターを押した。

 

 

 


2018.12.17 Monday

虹のかなたに逝った母


急激に体調を崩し、10月下旬に入院した母が

今月101413分、息をひきとった。

大腸ガンが肝臓に転移し、すでに全身ガンが始まっていた。

年内かもしれない、との医師の宣告だったので

子供や孫たち、身内で頻繁にお見舞いを続けた。

末期には声も出ず、体も動かせず、でも頭は明晰で、

目で会話をし、何やらお話をしているのだろう、唇は動いていた。

最後の週は眠っている時間が多くなり、

いまわのきわに駆け付けたときも、眠ったままで脳波が消え、

しばらくしてスーッと心電図の緑のラインが平らになって消えた。

大往生だった。

 

亡骸を病院から葬儀社の霊安室に搬送する途中、

母の住み慣れた家の周辺をドライブしていただいたのだが、

行く手の夕空に大きな太い虹がくっきりと浮かび、

東の空は陰鬱な灰色なのに、西の空は

雲間の向こうが鮮やかなルビーオレンジ色に輝いていた。

運転手さんが「不思議な虹ですね、雨上がりでもないのに」

と口にしたが、わたしは母が西方極楽に向かっているのを感じ、

妹たちにそう伝えると、二人も「お母さんの虹だわね」と

感慨深げで、三姉妹の心は満たされたのだった。

 

母はぎりぎりまで自分を律して独居をつらぬき、

ここ一年程は上の妹が夜のお泊りをしてくれていたものの、

長年、週三日、楽しそうにデイケアセンターに通っていた。

急に衰弱した一カ月弱だけ妹の家に身を寄せ、病院での一ヵ月は

ベッドに横たわって私たちの見舞いを受けながら過ごし、そして、

もうこれで十分だわ、というかのごとく静かに逝ってしまった。

美しい亡くなり方だった。

 

無理していなかっただろうか、

もっと娘たちに頼りたかったのではないか、

忍び寄る死と独りで向き合うのは怖くなかったか──

母に訊いてみたい。でも母は応えない。

それを自問自答しながら、母のように美しく死ぬために

これからを生きていくのが私のなすべきことだ。

「お励みなさい」という母の無言の“遺言”ともとれる。

身の引き締まる思いだ。

 

通夜と告別式の祭壇には、葬儀社のアドバイスもあり、

三姉妹で選んだお供え物を並べた。

母の好きな果物とフルーツゼリーを盛ったバスケット、

それに青山五丁目にある私の好きな和菓子處「菊家」

『青山』という豆菓子を三角山のように積み飾った。

 

 

「菊家」は故向田邦子さんがよくお買物にきた老舗として知られるが、

『青山』はふっくらと甘煮された丹波の黒豆を一粒ずつ

お砂糖でくるんだ上品な味で可愛いし、ケースごと積み上げると

白いお団子の小山のように見えて絵になるので最適だった。

葬儀社の担当者に「砂糖パックよりいいです」と褒められたし、

最後に母からの贈り物として孫たちに分け配ることもできた。

 

お天気にも恵まれ、とても良いお葬式だった。母の人徳だ。

若い時には小学校の教師をし、人を思いやる性格だった母。

読書家、書道家、俳人で、元気なときはいつも書き物をしていた母。

善光寺菩提所、浄土宗西方寺からいただいた戒名は「淑譽松聡大姉位」。

すごくふさわしい。

 

 

外に出ると、街はすっかりクリスマス気分。

でもわたしはここ二ヵ月で人間が変わってしまったようだ。

きらきらしたイリュミネーションを見ても心が躍らない。

バレエのレッスンに出かけても心が浮き立たない。

淡々と日々を送っているだけ。マザーロス、喪失感だ。

仕事がはかどらないし、このブログにもすごく時間がかかった。

大事な人を失って、わたし自身、転換期を迎えているのかもしれない。

 

 

 



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出版社「チャイコ」専属エディターの鵺子が、世の中の出来事、仕事、身辺種々雑多、趣味のバレエなどについて書いています。
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