2018.12.17 Monday

虹のかなたに逝った母


急激に体調を崩し、10月下旬に入院した母が

今月101413分、息をひきとった。

大腸ガンが肝臓に転移し、すでに全身ガンが始まっていた。

年内かもしれない、との医師の宣告だったので

子供や孫たち、身内で頻繁にお見舞いを続けた。

末期には声も出ず、体も動かせず、でも頭は明晰で、

目で会話をし、何やらお話をしているのだろう、唇は動いていた。

最後の週は眠っている時間が多くなり、

いまわのきわに駆け付けたときも、眠ったままで脳波が消え、

しばらくしてスーッと心電図の緑のラインが平らになって消えた。

大往生だった。

 

亡骸を病院から葬儀社の霊安室に搬送する途中、

母の住み慣れた家の周辺をドライブしていただいたのだが、

行く手の夕空に大きな太い虹がくっきりと浮かび、

東の空は陰鬱な灰色なのに、西の空は

雲間の向こうが鮮やかなルビーオレンジ色に輝いていた。

運転手さんが「不思議な虹ですね、雨上がりでもないのに」

と口にしたが、わたしは母が西方極楽に向かっているのを感じ、

妹たちにそう伝えると、二人も「お母さんの虹だわね」と

感慨深げで、三姉妹の心は満たされたのだった。

 

母はぎりぎりまで自分を律して独居をつらぬき、

ここ一年程は上の妹が夜のお泊りをしてくれていたものの、

長年、週三日、楽しそうにデイケアセンターに通っていた。

急に衰弱した一カ月弱だけ妹の家に身を寄せ、病院での一ヵ月は

ベッドに横たわって私たちの見舞いを受けながら過ごし、そして、

もうこれで十分だわ、というかのごとく静かに逝ってしまった。

美しい亡くなり方だった。

 

無理していなかっただろうか、

もっと娘たちに頼りたかったのではないか、

忍び寄る死と独りで向き合うのは怖くなかったか──

母に訊いてみたい。でも母は応えない。

それを自問自答しながら、母のように美しく死ぬために

これからを生きていくのが私のなすべきことだ。

「お励みなさい」という母の無言の“遺言”ともとれる。

身の引き締まる思いだ。

 

通夜と告別式の祭壇には、葬儀社のアドバイスもあり、

三姉妹で選んだお供え物を並べた。

母の好きな果物とフルーツゼリーを盛ったバスケット、

それに青山五丁目にある私の好きな和菓子處「菊家」

『青山』という豆菓子を三角山のように積み飾った。

 

 

「菊家」は故向田邦子さんがよくお買物にきた老舗として知られるが、

『青山』はふっくらと甘煮された丹波の黒豆を一粒ずつ

お砂糖でくるんだ上品な味で可愛いし、ケースごと積み上げると

白いお団子の小山のように見えて絵になるので最適だった。

葬儀社の担当者に「砂糖パックよりいいです」と褒められたし、

最後に母からの贈り物として孫たちに分け配ることもできた。

 

お天気にも恵まれ、とても良いお葬式だった。母の人徳だ。

若い時には小学校の教師をし、人を思いやる性格だった母。

読書家、書道家、俳人で、元気なときはいつも書き物をしていた母。

善光寺菩提所、浄土宗西方寺からいただいた戒名は「淑譽松聡大姉位」。

すごくふさわしい。

 

 

外に出ると、街はすっかりクリスマス気分。

でもわたしはここ二ヵ月で人間が変わってしまったようだ。

きらきらしたイリュミネーションを見ても心が躍らない。

バレエのレッスンに出かけても心が浮き立たない。

淡々と日々を送っているだけ。マザーロス、喪失感だ。

仕事がはかどらないし、このブログにもすごく時間がかかった。

大事な人を失って、わたし自身、転換期を迎えているのかもしれない。

 

 

 


2018.10.13 Saturday

念願の彼岸花と、西城秀樹

 

新刊『びっくりさせてよ』(11月中旬発売予定)の作業が

ようやく峠を越え、8月末決算の報告書も税理士に提出し終えた。

西城秀樹のビブラートの利いたハスキーボイスの歌を聴きながら、

書きたいことが溜まっているブログを書いている。

 

表紙がまだダミーですが、とりあえず帯なしと帯あり、表と裏です。

 

あまりにも忙しくてバレエのレッスンにも行けず、

筋肉の衰えは週一のマシン・ティラピスでなんとか回避してきたが、

これが案外有効で、お腹とお尻の引き上げを一週間は保てる。

ティラピスをやっていればバレエを止めてもセーフかもしれない。

 

忙しいとはいえ、今年はどうしても埼玉県高麗の巾着田にある

曼殊沙華群生地を見ておきたかったので、

9月下旬に友人たちと連れ立って出かけた。

20年も前から思っていたのにいつも行けなくて、

こんなことでは見ずに死んでしまう、と一念発起したのだった。

やっぱり凄かった。500万本の赤い絨毯ですからね!

最近、思うのだ、やりたいことは、すぐにやろうと。

なんだろう、自分が死を意識している、と感じる今日この頃。

 

雨の日で、濡れた彼岸花は艶っぽい。白い品種を見るのは初めて(上の写真)

 

8月のいつだったか、テレビの番組で、

西城秀樹の脳梗塞リハビリ中の姿を見て胸を打たれた。

5月に亡くなったことはニュースで耳にしていたが、

意識的に彼の歌を聴いていたファンではなかったので、

このような闘病生活をしていたことも知らなかった。

彼が大活躍していた時代、こちらは深夜まで仕事をする

報道や出版関係の会社勤務で、テレビの歌謡番組やドラマなどを

楽しむ生活ではなく、お恥ずかしいほど余裕のない人間だった。

訃報を聞いた頃は、この新刊『びっくりさせてよ』の

翻訳作業でPCに張り付いていた。

 

仕事の緊張もほぐれたいま、残務処理をしながら、

Youtubeをオンにしたまま彼の歌に聴き入り、

コンサートでの姿、ドラマなどに出演している動画などを観ている。

1972年に16歳でデビューし、63歳で逝去した彼が

歌唱力、演技力において驚くべき天才だったことがよくわかる。

歌うことの意味を深く掘り下げて、真摯に向かい合っている人だった。

私同様、亡くなってからファンになる人がものすごく増えているらしい。

国民栄誉賞を西城秀樹に! という動きもあるようだ。

「日本初」と付くことを数多く成し遂げた人でもあった。

野外や球場でのコンサート、クレーンを使った空中パフォーマンス、

マイクスタンドを振り回して歌い踊り絶唱するスタイルなど。

エンタテイナーとしてアジア圏に進出した先駆者でもあった。

 

9月2327日の5日間、池袋の映画館「新文芸坐」で

【追悼・西城秀樹 ヒデキ、フォーエバー!】が催されたので

遅れて来た熱狂的な秀樹ファンと化した私は、

格安料金で2本立てを上映するこの映画館に連日通い詰めた。

 

『おれの行く道』(秀樹19歳、田中絹代と共演)  

『ブロウアップ ヒデキ』(20歳、全国ツアーのライブ・ドキュメント)

『としごろ』(17歳、和田アキ子、森昌子、山口百恵、石川さゆり等が出演。

 本人はスター歌手としての特別出演)

『しあわせの一番星』(18歳、浅田美代子と共演)

『ひとつぶの涙』(17歳、森田健作と吉沢京子が主演。本人は歌手役で特別出演

『愛と誠』(18歳、原作は梶原一騎の劇画で、不良の少年と令嬢の愛の物語)

『現代仁侠伝』(42歳、奥田瑛二主演で本人はヤクザの組長役で前半に殺される)

『傷だらけの勲章』(31歳、刑事役で主演。エジプトロケも行われた。冒頭に

 ベッドシーンや後姿オールヌードのシーンがあって“びっくりさせてよ”だった)

 

映画館の壁に貼られていた当時のポスターや記事など。

 

本人執筆の著書や、若い頃の写真集も出ているし、

18歳年下の未亡人による本も11月に出版が予定されている。

私のなかの秀樹ブームはまだまだ続く

 

 


2018.09.22 Saturday

NBAバレエ団の「リトルマーメイド」

 

久しぶりに新所沢のNBAバレエ団に出かけました。

今月282930日と新国立劇場中ホールで公演される

リトルマーメイド」(こちら→)のリハーサルが

振付家のリン・テイラー・コーベットさん直々の指導のもと、

佳境に入っているとのことで、ブログ用取材と

情報収集を兼ねて拝見させていただいたのです。

照明、音響、装置、衣装の打ち合わせも行われていました。

 

アンデルセンの『人魚姫』をもとにしたバレエは

プロ、アマのバレエ団で様々な作品が演じられていますが、
今回NBAが日本初演するコーベット版はベリー・アメリカン的で、

ディズニーとブロードウェイとバレエが合体したような、

底抜けに明るく、それでいて切なくて胸がキュンとなり、

愛の力を信じさせてくれる作品です。大人も子供も、

つまりファミリーで楽しめるのです(ただし3歳未満はNG

写真でご紹介してみましょう──。

 

海の底では、16歳になったマーメイドの誕生パーティーが開かれています。

シャープな踊りを披露するメカジキくん、2匹の蟹のダンスはとても愉快で、

ゴールドフィッシュやフグやヒトデもチャーミング。

父上である海の王にも祝福され、マーメイドは浜辺への初冒険を楽しみにしています。

  

パーティーに招待されなかった海の魔女が乱入して大騒動になりますが、

魔女の嫌がらせもなんとか治まり、マーメイドはいよいよ冒険にでかけます。

その頃、海上ではクリスチャン王子が乗った船が嵐に見舞われていました。

 

浜辺に上がったマーメイドは倒れている王子を見つけ助けますが、

人魚の姿をしている我が身が恥ずかしくなって、王子のそばを離れます。

そこに若い人間の女性、ソーニャが友だちとやってきて、

「あなたの命を救ったのは私」と嘘を吐き、王子から求婚されるのです。

それを岩陰から見ている可哀そうなマーメイド。

 

王子に恋をしたマーメイドは、海の底に戻って魔女と取引をします。

魔女がマーメイドの美しい声を欲しがっているので、

それと交換に自分を人間にしてくれと頼むのです。

美声をものにした魔女は大喜び。

 

人間になったマーメイドは浜辺に打ち上げられ、立ち上がろうとします。

でも、初めての脚はとても痛くてつらい。でも頑張って立ち上がります。

王子がそこにやってきますが、マーメイドは声が出ないので

「倒れていたあなたを助け、歌っていたのは私です」と言えず、

王子からは奇妙だけど可愛い娘だと思われて、仲良しになります。

 

マーメイドを連れてお城に戻った王子は、ソーニャとの結婚式に大遅刻。

それにマーメイドは、二人が誓いの言葉を交わそうとした時、

王子にすがりつき止めようとして顰蹙を買ってしまいます。

一方、王子から「もう一度、あの美しい歌声を聞かせて欲しい」

と頼まれたソーニャは歌えずに、嘘がばれて逃げ出します。

 

その頃、海の底では、マーメイドの異変に気付いた王が

「私の娘に何をした!」と魔女に闘いを挑んでいました。

王は倒されてしまいますが、海の仲間たちが闘い続け、勝利します。

 

魔女が敗れると、マーメイドに美しい歌声が戻ります。

でも、また人魚に戻ってしまい、その姿を王子に見られ、

マーメイドは岩から海に飛び込みます。岩場に走るクリスチャン王子。

自分を救ってくれたのはマーメイドだったとようやく気付いたのです。

 

さて、その後、マーメイドと王子はどうなるのでしょう?

普通ではない、想定外のエンディングだったので、私はビックリしました。

面白いです、夢があります、世の中こういう風にありたいものです。

是非、お子様連れや、恋人と、あるいはご夫婦で劇場に足をお運びください。

マーメイド、頑張って!」「カニさん、フグさん、負けないで!」

会場では子供たちのそんな可愛い声が飛び交うことでしょう。

透き通った声で語られる日本語のナレーション、

美しい音楽と歌声に合わせてダンサーが踊り、演技をして大熱演です。

海の底の情景を盛り上げる照明、特殊効果、装置にも目を奪われます。

 

若き日のケヴィン・ベーコンやサラ・ジェシカ・パーカーも踊り、演じた

伝説的ミュージカル映画「フットルース」の振付家としても名高い

リン・テイラー・コーベットさんのスタイリッシュなこのバレエ作品は

上演時間約70分、ちょうど映画1本を見る気分で楽しめます。

「くるみ割り人形」のように、NBAの年中行事的な人気出し物になるでしょう。

 

 



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