2020.02.13 Thursday

鳥肌立つ『ホラーナイト』:NBAバレエ団

 

治療法が未知の新型肺炎を起こすコロナウィルスが

日本にも蔓延する危機が高まりつつある今日この頃、

都内某所でNBAバレエ団2月公演『ホラーナイト』の

記者会見が行われた。新国立劇場・中ホールでの

本番を15日&16日に控えている今回の公演は、

ドラキュラ」と「狼男」の二本立てになっている。

 

右から平野亮一、久保綋一、宝満直也の面々。ダンサーたちの立ち姿は絵になっている。

 

NBAはマイケル・ピンク振付『ドラキュラ』全幕を

2014年、大貫勇輔をドラキュラ役に迎えて上演し、

日本ではこれまで観ることのできなかった、

大人にも見応えのあるバレエとして大いに反響を呼んだ。

今回2月の「ドラキュラ」は、8月公演が決定している

その全幕作品から第一幕をプレビュー的に

観賞していただく趣向なのだという。

 

 

しかし単なるプレビューではないところがNBAらしい。

なんとドラキュラ役に、英国ロイヤル・バレエ団の

プリンシパル、平野亮一を迎えるという贅沢さ。

むろんこれは8月にも平野がドラキュラを演じる

ということのパブリシティも兼ねている。

平野ドラキュラが、真夏の8月にもロンドンから飛来し、

血の滴るような深紅の長い衣装を翻し、蛇のように這い纏わり、

艶めかしく跳び踊り回り、女男の区別なくその生き血を

吸いながら殺していくーーなんと恐ろしくも美しい情景。

 

『ドラキュラ』はエロスの恍惚に震える戦慄のバレエなのだ。

加えて8月公演には、やはり英国ロイヤル・バレエ団の

プリンシパルで、平野がよく一緒に組む美貌のサラ・ラムも

ゲスト出演する。こうなったらチケットは完売必至だろう。

 

平野は王子様を始めとして様々な役を踊る大スターだが、

近年の『フランケンシュタイン』でタイトルロール

ともいうべきクリーチャー役で存在感を示し、

演技の幅を広げている。クリーチャーもドラキュラも

いわば“怪物”だが、演じる側として双方に違いは

あるかと問われると、「クリーチャーは外見からして

醜く恐ろしい存在なので、それに見合う動きが必要です。

その点、ドラキュラ伯爵は有り様もピンク氏の振付も

とても自然体で、ぼくの踊りで吸血鬼の

ホラーな雰囲気を醸し出していけたらと思います」

とのご託宣。ダンサー冥利に尽きる役柄のようだ。

 

そしてもうひとつの演目「狼男」。こちらは

NBAの振付家兼ソリスト、宝満直也による新作だ。

手がけることになったのは、久保・芸術監督から

「ドラキュラとの抱き合わせで舞台に乗せるから、

狼男をテーマに振付をしてほしい。内容も直也に任せる」

と単刀直入にして単純明快な依頼があったからなのだという。

 

 

しかし言うは易く行うは難し。

「どちらも米国で映画になったモンスターで、

イメージが被ります。ピンクさんの作品は物語バレエで

ストーリー性があり、満月や狼の遠吠えも出てくる。

同じことはしたくない」と直也は大いに悩んだ。

「だから反対のことをしました。ストーリー性を排除し、

人間でもない、獣でもない、曖昧な悲しい存在、

そういう者たちの生きるモチベーションは何なのか」

その思いを探りながらダンサーに動いてもらい、

彼らの動きにインスパイアされながら作業を進めたという。

「男と女、男と男、女と女がいて、誰が狼なのか、

誰もが狼かもしれず、誰に噛み殺されるかわからない、

自分が誰かを噛み殺すかもしれない。そんな状況で

ぼくだったらどうするか。自問自答の作業でした」

 

とても興味深い! 宝満直也の「狼男」は哲学的、

存在論的、実存主義的。究極の「僕って何?」なのだ。

奈落の底のレゾンデタール。絶対ホラーの世界。

それが、難解な文章ではなく、バレエで表現される。

心の臓にガツンと来て、観客も我が身を省みるだろう。

 

考えてみるといい。今日のコロナウィルス騒動を。

隣の人がウィルスを持っているかもしれない、

移されるかもしれない、いや、自分が移すかもしれない──

今、我々はパンデミック・ホラーの世界に身を置いている。

NBAの『ホラーナイト』が実にタイムリーに思えてくる。

 

書き忘れてはいけない。直也はこの2月そして8月も、

平野とダブルキャストで舞台に立つ。繊細な風貌の本人は、

平野ドラキュラとは違う吸血鬼になることを自認している。

「平野さんは体が大きく男性的な魅力のあるダンサー。

ぼくの持ち味はどちらかというと中性的ですから」

いやはや、男性的OK、中性的OK

どちらのドラキュラも観客を魅了すること間違いなし。

NBAはうまいキャスティングをしたものだ。こうなったら、

どちらのドラキュラも観たくなるではないか。

 

ホラーナイト』@新国立劇場・中劇場

2.15(土)14:00〜平野Dracula18:00〜宝満Dracula

2.16(日)14:00〜平野Dracula

 

ドラキュラ』@新国立劇場・オペラパレス

8.1(土)13:00〜平野Dracula18:30〜宝満Dracula

8.2(日)14:00〜平野Dracula

 

http://www.nbaballet.org/   

 

*敬称は省略させていただきました*        

 

 

 

 


2020.03.16 Monday

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