NBA「海賊」: 未見のバレエ観て歩き

  • 2018.03.18 Sunday
  • 12:16

 

17日の土曜はNBAバレエ団「海賊」の初日で、

東京文化会館に出かけた。

久保綋一芸術監督の下に実現したオリジナル制作、世界初演、

それはバレエ史上だれも経験したことのない「海賊」だった。

なによりも、イギリスの詩人ジョージ・ゴードン・バイロン卿

長編叙事詩『海賊Le Corsaire)』のストーリーの流れに沿って

台本が作られているのが、文学好きの身には嬉しい。

 

 

バイロン卿のこの叙事詩は1814年に出版され、発売当日に

たちまち1万部が売れたという、200年前の大ベストセラーだった。

これを基に、バレエ「海賊」がパリで初演されたのが1856年。

以後、プティパ版、グーセフ版、セルゲーエフ版などが上演されているが、

いずれ似たり寄ったりの、当時必要とされた大衆的な娯楽に追従した内容で、

装置や衣装やダンサーや、ちょっと振付が変ったくらいの改訂版では、

もう話は分かっているから、私なんぞは見たいと思わない。

 

ところがNBAの久保綋一版は、バイロン卿の詩が内包する

人間の運命の悲哀──ひとりの男を愛してしまった、女ふたりの

心の揺れ動きや葛藤。裏を返せば、ふたりの女を愛してしまった男の

戸惑い、やるせなさがうまく描かれていて胸が痛くなった。

そんなバイロン卿の詩の精神性を“改竄”せずに、

構成上必要な変更だけが行われている──

 例えば、バイロン卿のメドーラは海賊船には乗らず、館で留守番をし、

 帰らぬコンラッドが死んだものと思い、悲痛のうちに自死をする。

 久保綋一版では、先に海に出たコンラッドを追ってメドーラも乗船し、

 海賊たちと行動を共にして悲劇的な事件に巻き込まれる──

NBAの「海賊」は、卿の言いたいところをバレエで表現し得ているのだ。

 

新たな楽曲を新垣隆が創作し、それを従来の音楽に違和感なく

繋いでいく共同作業を行った指揮者の冨田美里

新たな振付をして、既存の振付にこれまたシームレスに紡いでいった宝満直也

リアルな戦闘シーンの殺陣振付・指導をした新美智士

そうして成された彼らの仕事を、ダンサーたちが踊ることで、

古色蒼然とした古典作品に新たな命が吹き込まれた。オールニッポンの快挙。

年を重ねるごとに細かいブラッシュアップ、リタッチが行われ、

再演に再演が重なっていくことを願う。

 

6日の火曜日、公益財団法人としま未来文化財団と豊島区主催による

舞踊鑑賞講座「目白三人の会 〜3つのダンスの世界〜」を

池袋の東京芸術劇場プレイハウスで観た。

 日本舞踊: 花柳千代舞踊研究所

 現代舞踊: 芙二三枝子舞踊団

 クラシック・バレエ: 小林紀子バレエ・シアター

によるお話を聞いて実演を鑑賞するという、実に有意義なイベントだった。

ほぼ毎年開かれ、今年で第32回目となるそうだが、

師事しているバレエの先生が出演なさるので、初めて伺った次第。

 

冒頭、高野之夫区長による挨拶があったが、

2020年の春には旧区役所跡地周辺に超高層ビルが建設され、

8つの劇場を含む国際的なカルチャーゾーンが開業するとのこと。

ここ数年、東京都内では劇場の閉鎖が続いており、

バレエの公演の場所も減っているのが懸念されているので、

池袋に一気に8つの劇場というのは大変な朗報だ。

東京芸術劇場で公演することもあるNBAバレエ団にとっても然り。

 

*文中、敬称略とさせていただきました*

 

東京芸術劇場の帰りにいつもお茶するPatio de METROの

ベルギー産チョコレート・濃厚ショコラケーキとアロマ濃厚の珈琲。

 

 

 

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  • 2018.09.22 Saturday
  • 12:16
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コメント
寒いですね。
精力的に活動している様子がペンに乗り移って、
読んでる私にも躍動感が伝わって来ます。
バレエ評論家としても一人前ですね。
  • akko
  • 2018/03/21 5:30 PM
akko様
コメントありがとうございます。バレエを語るなら、観てないとと思い、しゃかりきに観て歩きしてます。レッスンしているのも、ダンサーがどんなに大変かを身をもって知っておきたい、というのもあります。
  • 鵺子
  • 2018/03/24 3:33 AM
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