2019.04.03 Wednesday

4月から新たな自分になる

 

あっという間に時が過ぎた。

2月は妹たちと毎週実家に集まって相続の打ち合わせ、

3月も毎週集まり遺品の整理と形見分け作業だった。

 

遺品は昨年12月に亡くなった母のものだけではない。

ものを大切にするあまり、母は処分ができない人で、

父や、おまけに舅・姑の時代のものまで残っていた。

掛け軸、陶・磁・ガラス器、和服、軍服、サーベル、書籍、論文資料、

結婚式の引出物、俳句や日記や随筆原稿の山に家計簿の束、

夥しい数と種類の記念切手や硬貨などまで──

押し入れ、物入れ、箪笥を開けるたびに三姉妹は溜め息を吐いた。

「やだ、これ、わたしが二十歳のころのワンピース!」

「みんなの通信簿や表彰状まで、どういうつもり?」

「わたしがプレゼントしたバッグ、使わないで箱に入ったままよ」

 

毎年花をつける実家の白梅。正確に時を刻まない、忘れた頃にぼ〜ん♪と鳴る実家の捩子巻き

柱時計は長女と次女で取り合いになったが最終的に次女のものに。東芝の真空管ラジオは

修理可能で長女が頂いた。

 

「ねえ、こんなのがあるわよ」

そう言って次女が見せた写真がなんだかわからず、

裏を返すと、わたしの下手な字で、アメリカの生活は楽しい、

なんて書いてある。あっ! 脳天を打たれたかのような衝撃を覚えた。

初期にお世話になった日系人のミセスとキッチンで撮ったものや

両親宛てのクリスマスカードに添えられたご家族のファミリーフォトだ。

昔すぎて、自分の顔がにわかには認識できなかったが、

あぁ、母はこれらの写真を見て長女がもう帰ってこないのではと不安に

襲われ、あの頃から体調を崩したのだとわたしは初めて悟ったのだ。

子供が男の子ふたりで女の子がいないご夫妻は、

そのカードと写真を送った頃、当時横須賀在住だった親戚を通して

わたしを養女にしたいと連絡してきたという。

長女を養子に出すわけにはいかないと、当然両親はお断わりしたのだが、

双方でそんなやり取りがあったことを後に聞かされて、わたしは動揺し、

母の精神状態を慮り、結局独り暮らしを始めることになったのだった。

 

(上の写真)カリフォルニア州レッドウッドシティでお世話になった日系家族のミセスと。

(下・左)カレッジが留学生のために企画した市内見学で訪れた地元新聞社の玄関先で社員の人と。

(下・右)写真の裏に書いた母宛ての私信。「隣のおじさんは一緒に撮ろうと言ってきたので

撮らせてあげました。可愛い女の子には目がないらしい」なんて書いてある。

 

そんなことを思い出し考えながら、漸く実家の片付けを済ませた。

両親の書き物は読まずに処分するのは憚られるのでわたしが引き受けた。

ふたりの心の中を覗くように、ゆっくり目を通すつもりだ。

 

実家に通っているうちに梅の花が散り、桜の蕾が膨らみ花開いた。

母が亡くなってからというもの、仕事への意欲が減退している。

でも踊っていると無心になれるのでバレエレッスンは続けている。

1月に始まったAngel Rの三ヵ月パ・ド・ドゥワークショップでは

ダイアナとアクティオン」をなんとかカタチにした。

いくらなんでも4月からは本作りに戻るけど

4月スタートの「黒鳥」でもスキルアップしたい。

 

(中央の写真)週一通っているルシャトンバレエ・スタジオがある豪徳寺の駅前花壇の桜。

ライトアップによく映えている。

(周囲の写真)Angel Rの佐々木淳史先生による「ダイアナとアクティオン」のWS最終日。

 

3月のマイ・バースデーに西城秀樹さんから動く写真のカードが届いた!

秀樹さんが口元に手をやっている写真に「お誕生日」の文字が映り、

カードの角度を変えると秀樹さんがこちらに手を差し出し「おめでとう」

の文字が現れる。天国の秀樹さんに代わりァンクラブが送ってくれた。

彼の誕生日は4月13日でもうすぐだ。64歳になるはずだった。

一周忌の命日が5月16日にやってくる。

 

 

命日といえば、昔の上司で元Newsweek東京支局長の

バーナード・クリッシャーさんが3月5日に亡くなった。

活字ジャーナリストとして初めて昭和天皇との単独会見を成し遂げ、

カンボジアの貧しい子供たちが教育を受けられるようにと

さまざまなかたちで慈善家として貢献してきた人だった。(こちら→)

人は生まれ、そして死んでいく。

わたしもそのうち死ぬ。身の回りを片づけなければ。

これだけは母のようであってはならない、と思うのだ。

断捨離、断捨離。

 

 


2019.02.18 Monday

銭湯帰りに聴く西城秀樹の「漂流者たち」

 

自分のことだけを考えて毎日を過ごしている。

母が亡くなり、心配のたねが無くなり、そんな状態に慣れてきた。

本を読み、調べ物をし、考え事をし、西城秀樹さんの歌を聴き、

母と過ごした頃の思い出に浸り、バレエとピラティスで体を動かす。

心配事がないので物事に集中もできる。

 

いや、心配事はある──

朝鮮半島、日韓・日朝関係、辺野古基地問題はどうなるのだろう、

なぜ幼い子供たちが実の親たちに殺され虐待されるのだろう。

こういうニュースには気持ちが沈んでしまう。

でも自分の力や意志だけでは片付けられないことなので、

とりあえずは自分のことに専念する。

 

このところ、レッスン帰りに南青山三丁目の「清水湯」に通っている。

以前のブログでも書いたが、100年も続いている銭湯なのだ。

ジャグジーや高濃度炭酸泉やシルク湯につかり、

知っている人はいないので誰と話す必要もなく、

湯煙のむこうにうごめく人体を見るともなくぼんやり眺めている。

 

で、湯上りにロビーのテーブルについて

KIRINの「ハードシードル」を呑む。これがたまらない幸せ。

りんご果汁の炭酸飲料でアルコール分4.5%なのだが、

軽いシャンパンみたいですごく美味しい。

ここで食べるチョコとバニラのソフトクリームも好きだが

シードルのほうがカロリー低いので爛瀬鵐機辞瓩砲呂笋辰僂蠅海舛蕁

 

 

10分ほどして外に出るころには気持ちよいほろ酔いで

いまはまっている西城秀樹の「漂流者たち」(こちら→)

を聴きながら帰途につくことにしている。

1982年、本人も出演していた日本テレビの連続ドラマ

「ホーム・スィート・ホーム」の主題歌で

それまでに歌ってきた作品とは雰囲気が異なるが、

歌詞と歌唱法がなぜかいまのわたしの琴線に触れる。

親に反対されながら16歳で広島から上京してきた当時の自分自身と

歌詞の内容がダブり、コンサートや音楽番組で歌うとき、

彼は涙を浮かべていることがあったといういわくつきの歌だ。

作詞・作曲は藤圭子の「新宿の女」の石坂まさを。

歌の世界に入り過ぎたと言われている動画もある(こちら→)

 

話しは変るが、今週の金曜は福生のライブハウスに行く。

横田基地があり、犖造蠅覆アメリカに近い瓩△諒\源圓澄

どれほどアメリカンなのか、昔から関心があったが

友人から知り合いのミュージシャンが出演するから行かない?

と誘われたので出かけることにした。

 

それでガイドブックでにわか勉強をし、

村上龍の『限りなく透明に近いブルー』も読み直している。

若いときにはドラッグとセックスのことがぴんとこなかったが、

いま読むとこれはすごい文芸作品なのだと衝撃を受けている。

バロウズの『ジャンキー』に比べれば爐子様ランチ瓩世、

写真・映画みたいで映像的な龍さんの文体はやっぱり

芥川賞のベストセラーだけのことはある。

 

 

基地フェンス沿いのルート16にはカフェやレストランもずらり。

一気に太ってしまうかもしれないが、すごく楽しみなトリップだ。

わたし、変れるかな?

 

 


2019.02.06 Wednesday

熊川哲也の「第九」にブラボー!

 

1月18日、亡き母の四十九日と納骨を済ませた。

以来、滞っていた仕事や家事を片付けているが、喪失感からか、

人生観の変化のせいか、単に自分が年とったためか、

遅々として進まない。

 

バレエには安息日の日曜を除く毎日、マシンピラティスには週一、

規則正しく通っている。おかげで軸ができて体幹がしっかりしてきた。

毎日炭水化物は玄米ご飯1膳にしているのに体重が1.5キロ増えたのは、

脂肪より筋肉が重いからで、踊りやすい体になってきた。。

 

1月に入ってから、母の不在を意識しないよう、努めて外出をした。

ありがとう! 西城秀樹展 〜ミスターフェスタ 永遠に〜」が

静岡市で開催されていたので発作的に東海道新幹線にとび乗った。

現役のときに一緒に仕事をした森林写真家・石橋睦美さんの写真展

日光 聖域」を観に銀座のCANNON GALLERYにも足を運んだ。

280年の歴史を誇る「ロシア国立ワガノワ・バレエ・アカデミー」の

可愛く華やかな10代の生徒たちによる『人形の精』組曲と『パキータ』を

オーチャードホールで観賞した。大人になりきっていない、

細いラインの体で踊る若いダンサーたちは見るからに西洋人形だ。

月末にはゴールドジム恒例の発表会を中野ゼロホールで見た。

私も以前師事した元東京バレエ団ソリストの芝岡紀斗先生の作品で、

懐かしいバレエ友だちがまだ踊っていて頼もしかった。

 

(左から時計回りに: JR高尾駅最寄りのイタリアンレストラン「FUMOTOYA」で、四十九日法要の

帰りに食べた桑の葉と苺のジェラート。桑の葉は生まれて初めて口にしたが、ダイエット効果、

メタボ予防などになるそうだ/法要を行った高尾山中の料亭「うかい鳥山」の広大な庭/

日本の森の写真家・石橋睦美さん、日光の作品を背にして)

  

2月3日にはオーチャードホールでKバレエカンパニー

アルルの女」と「ベートーヴェン第九」を観賞した。

当日の「第九」は芸術監督・熊川哲也さん自らも踊るというので

大分前に狙ってチケットを購入していたのだ。

 

アルルの女」といえば、中学の音楽クラスで《メヌエット》を

リコーダーで練習した。それがローラン・プティ振付のバレエでは

若い男女の新婚初夜のシーンに使われていて新鮮だった。

結婚の喜びに浸る女、彼女との結婚に違和感を覚えて苦悩する男。

YouTubeパリ・オペのゲランとルグリのがアップされている(こちら→)

プティはおもしろい。諧謔的に人間の悲喜劇を映し出しているのだ。

この《メヌエット》のパ・ド・ドゥ、練習してみようかなぁ。

 

第九」は芸術監督演出・振付で、2008年が世界初演だった。

今回は4回目の上演になり、カンパニー設立20周年の節目に持ってきた。

4つの楽章からなるシンフォニックバレエで、わたしは初見だが、

熊川さんの構成力、想像(創造)力はさすがで、独特の世界観だ。

「クレオパトラ」同様、照明・装置含めて全体がアートになっている。

ご本人は《母なる星》と題した第四楽章で威風堂々と登場。

生命の行く手を指し示すリーダー、預言者的シンボル然として踊る。

微塵もぶれない軸、宙を裂くようなピルエットも健在だ。

オーディエンスの目が彼一点に注がれている。場内を支配する緊張感、

それをものともせず彼は踊る、神々しささえ漂わせて。

その存在感があまりにも大きくて、このバレエ団の中からは

彼を超えるダンサーは生まれないだろう──

そんな爛優ティブな期待感瓩気抱いてしまう。

 

母が亡くなってからというもの心が沈みがちで、バレエ音楽聴くのも嫌、

東洋人で姿かたちの美しい西城秀樹さんの歌を聴くほうが癒される──

 

 

(左から時計回りに: 西城秀樹展会場エントランスでファンたちを迎えてくれた等身大の秀樹さん

/ワガノワ・バレエ・アカデミーのプログラムは今年のカレンダーにもなっていて便利/Kバレエの

今回のプログラム。プリンシパル同士の荒井祐子さんと中村祥子さんの対談が充実している。

個人的には、荒井さんの気の強そうな、つりあがった目とメリハリのあるボディが好き)

 

そんな風に思っていたのだけれど、元気を取り戻しつつある今、

哲也さんの凛とした踊りを観て、バレエの素晴らしさを再認識している。

 

 

 

 



calendar

S M T W T F S
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930    
<< April 2019 >>

profile

(株)チャイコのHP

(株)チャイコのHP

このブログについて

出版社「チャイコ」専属エディターの鵺子が、世の中の出来事、仕事、身辺種々雑多、趣味のバレエなどについて書いています。
ページ上部の「鵺子草紙」をクリックすると、どこからでもトップページに戻ることができます。

チャイコ新刊本


セックスとドラッグ渦巻く
バレエ界を潜り抜け、
普通であることの幸せを知った
主人公ジョアンが新たな生き方を
見いだす激情と愛情の物語。
定価:1,800円(税別)
公式ショップにて発売中!

チャイコ既刊本

日本バレエを変える
─コーイチ・クボの挑戦─

NYタイムズ紙から絶賛され、
アメリカで20年踊り続けた
天才ダンサー・久保綋一の
新たな挑戦とは?
前代未聞の半生記(DVD付き)
公式ショップにて発売中!

悪の道化師
赤毛のアンセム・シリーズ

アンセムの物語、後編!
地面が崩れ、摩天楼が沈む!
不気味なテロ集団から
「スーパーバレリーナ」は
シティを救えるのか?
公式ショップにて発売中!

秘密の心臓
赤毛のアンセム・シリーズ

一度死に、鼓動600回/分の
心臓でよみがえった
バレリーナが空を飛び、
弾丸のように走り、悪と闘う!
公式ショップにて発売中!

ミスター・Bの女神
バランシン、最後の妻の告白

神と謳われた天才振付家
その神の創造力を喚起した女神
これは二人の真実の愛の物語
日本図書館協会選定図書
公式ショップにて発売中!

selected entries

categories

archives

recent comment

  • 熊川哲也の「第九」にブラボー!
    鵺子
  • 熊川哲也の「第九」にブラボー!
    amber
  • 母のない子になったから
    鵺子
  • 母のない子になったから
    akko
  • 虹のかなたに逝った母
    鵺子
  • 虹のかなたに逝った母
    funabashi
  • 念願の彼岸花と、西城秀樹
    鵺子
  • 念願の彼岸花と、西城秀樹
    funabashi
  • 念願の彼岸花と、西城秀樹
    アンジェリカ
  • 漸く初校ゲラ戻して晩夏かな
    鵺子

search this site.

PR

others

mobile

qrcode

powered

無料ブログ作成サービス JUGEM