十字架がマイブームなわけ

  • 2017.06.17 Saturday
  • 23:26

 

14日の水曜、青梅市の河辺に出かけた。

高校からの友人Sさんが宝飾店「大山宝石」の社長なので(こちら→)、

十字架をデザインしたアクセサリーを探しているとメールしたら、

いろいろあるわよ、というので拝見に上がった次第。

 

新宿から中央線青梅特快で乗り換えなしの約40分で河辺に到着。

平日の昼間は空いているし、すごく便利、快適だった。

軽くランチをし、そこにもうひとり同窓の友人Aさんも加わって、

近所の「吹上しょうぶ公園」(こちら→)でハナショウブが見頃というので

寄ってみたら凄かった。実に奇麗、美しい! 

紫、薄紫、薄水色、黄色、白、限りなく透明に近い白などが

6月上旬から下旬にかけて約10万本が咲き誇るという。

 

 

 

華麗なハナショウブ鑑賞後、

大山宝石」では眩しく輝くジュエリーたちとご対面。

友人が用意してくれていた十字架たちには

ピアス、指輪、ペンダントがあり、目移りして困ったが、

直感でニーズに合うものを複数選んだ。

 

耳たぶに密着してキラッと光るチェリーゴールドのクロスの中心に

針の先ほどの白ダイヤモンドが入った極小のピアス。

白蝶貝のシンプルなクロスが楚々と揺れるぶら下がりピアス。

爪楊枝の先ほどのイエローダイヤモンドを十字に埋め込んだ

チョーカータイプの小さなペンダント。

極薄に平打ちされた十字のなかが打抜きで網状になっている

イタリア製のペンダント(片面は金色、もう片面は白でリバーシブル)。

それから、小さくて厚みのある赤瑪瑙のクロスと

透き通ったトパーズのネックレスの組み合わせ。

これは白蝶貝のピアスとお対で着けるとポップで楽しい。

 

赤瑪瑙も白蝶貝も縦20ミリ×横10ミリ

 

十字架はキリストが磔になった残酷な死の象徴なのだから、

身に着けるのなら派手に煌びやかなものではいけないと思っている。

だからどれも本当に小さく、清楚な感じのものにした。

 

昔からイエス・キリストには関心があり、

旧約・新約聖書は物語として読んでいたし、

翻ってニーチェの無神論にも傾いてみたり、

シュタイナーの超感覚を論じた神智学/神秘学に嵌ったり、

ロレンスの現代文明批判として読める『黙示録』も粋がって愛読した。

今、考えるところがあり、これらの書物を再読しながら

キリスト教の研究をしている。

 

十字架を身に付けることを思い立ったのは、

そんな自分への道標にしたいからだ。

日本を含む世界中で起こっている嫌なことへの牴罎魂の闘争瓠

あるいは世界の平和・良心の復活を祈って、なのかもしれない。

だからといって、なにもジュエリー買わなくてもいいのだが……。

それが、そこ、心弱き、物欲に塗れし俗人、君の名は。鵺子さん。

 

 

シネマとバレエとお仕事と、そしてムムリク

  • 2017.04.02 Sunday
  • 03:30

 

時は静かに流れている。

好きなことだけやっていられる幸せ。

そりゃ、掃除や料理や洗い物は好きじゃないけれど

まあ、最低限の人間の生活の営みとしてやっている。

その他の時間はケーブルテレビやDVDで観る昔のシネマ、

毎日体を動かす1クラスのバレエレッスン、

そして遅れている仕事をこなす日々。

それに疲れたら息抜きに読書をする。

 

斜め向かいのマンションの植え込みの

しだれ桜が綺麗に咲いているのを眺める幸せ。

こんな恵まれた境遇も、高齢の母が元気にしてくれているからだ。

遠からず、妹たちと分担しながらの介護生活がやってくる。

今の時間を有り難く、大切に、満喫して生きていよう。

 

 

山の家で片付けをして、東京から移した荷物の中から

画家で友人だったムムリクさんの絵も取り出した。

ムムリクさんが亡くなってもう2年以上が過ぎたのに、

こうして作品を眺めることができるから、

彼女がこの世にいないとは思わずにいられる幸せ。

 

 

ムムリクさんは大人なのに子供の心で生きていた人だ。

作品には邪心のない、汚れのない童心が溢れている。

彼女の絵を眺めていると、幸せになれる、子供になれる。

ムムリクの絵がそばにいてくれるので救われる。

彼女は、大好きだった伯母様、ご両親、ご主人と

次々に介護をして見送るうちに、我が身の健康を害し、

そして皆の後を追うように逝ってしまった。

「ムムリク、そっちでも絵を描いている?」

 

 

ノーメイクでは歩けない: ヌエコの退屈な日々最終回

  • 2015.09.18 Friday
  • 23:26

あまりにも仕事が多く、
書くこともありすぎて、
ヌエコはブログ更新を二度も怠ってしまった。
仕事が多いと他のことをするための頭の切り替えができず、
書くことがありすぎると頭のなかの整理が難しく、
筆が動かなくなってしまうのだ。

今週になって仕事も片付き、精神的余裕もでてきたので、
頭のなかもすっきりしてきた。
九月十八日と二十五日分をいま(三十日)に一気に書いている──

     *      *      *

術後一ヶ月でラジオ体操程度の運動をしても良い
と医師から言われていた。
それは九月十九日だった。
でも体がギシギシ錆ついていたので
我慢できずに十六日夜、思い切ってレッスンに出かけた。
バレエはラジオ体操よりきついからNGのはずだが……。

でも、なんともなかった。
一時間半のレッスンのあと、
脛の筋肉が張ったので十分にストレッチをしたら、
翌日は治っていた。

アイメイクも十九日から解禁だったが、
「アイメイクなしでバレエスタジオに行くのは、ちょっとね」
ヌエコにとっては裸で外を歩くようなものなのだ。
それに、アイメイクなしでは誰も彼女とは気づかないだろう。
実は、そういう経験があるのだ。

カリフォルニアのカレッジに留学していた大昔、
ヌエコはサンフランシスコに住んでいたことがある。
必須修得単位になっている救急介護の講習を市内の保健所で受けたあと、
レストランのカウンター席で食事をしていたら、
男に話しかけられ、関心をもたれ、
「ぼくのアパートに来ない?」
「いやぁ、それは」
「じゃあ、送っていくよ」
「ノーサンキュー」
「外は雨だし、タクシーもなかなか来ないよ」

と、まあ、そんなこんなで結局送ってもらい、
なにごともなくアパートのドアの前で別れた。
が、翌日、その男が、どういうわけか、
暗証番号を持っている住民でないと入れないはずの
アパートのロビーをうろうろしていたのだ。

ヌエコはハッ! とした。
「わたしを探しに来たのだわ!」
が、男は彼女の横をスーッと通り過ぎた。
ヌエコは二度ハッ! とした。
「この人は、昨夜会ったわたしに気付いてない!」
彼女はノーメイクだったのだ……。

以来、目のまわりを黒いアイシャドウとペンシルで
ぐるりと描かないと自分ではないような気がするのだ。

十八日には経堂にある行きつけのヘアサロン
Vitrine」に出かけた。(こちら→)
もちろんばっちりアイメイクをしていった。
術後十二日にはションボリノーメイクで来店した彼女が、
気持ちもメイクもいつも通りなので
店長さんも喜んでくれた。
「髪の調子もいいですよ」と褒めてくれたりもした。

帰り道、下北沢で下車し、
FBでお友だちが紹介していたCat Cafe
キャテリアム(Cateriam)」に寄ってみた。(こちら→
一時間千円ドリンク付きでネコちゃんたちと遊べる。
写真撮影もOKだ。



この写真には4匹が写っている。鍋ネコもいる。

チャイコのシンボルマークのような黒猫が三匹もいて
抱っこしてみたかったけれど、
じっと眠ったままだったり、近づくとソーッと行ってしまう。




そんな気ままさがネコたる所以なのだ。
久しぶりにネコちゃんたちのなかに身を置き、
そば茶を飲みながら読書をして、
ヌエコは幸せだった。

夜はポアントのクラスに出てみた。
大丈夫だった。
目が良く見える分、進行方向もしっかり見つめているし、
先生のお見本もはっきり脳に入ってくる。
不思議なのは、大スタジオに入ったときに
「えっ! こんなに狭かったの?」と驚いたことだ。

視界がぼんやりしていたときは
霧のなかにいるようで遠くが見えなかった。
それで距離感がなかったのだろう。
目がよく見えることは世界をはっきり認識することなのだ。
ヌエコはそれを再確認したのだった。

そして「退屈な日々」に別れを告げた。
バレエ再開の日々が始まった。



 

麻実れい「夜への長い旅路」:ヌエコの退屈な日々

  • 2015.09.11 Friday
  • 23:55

ブログに手術のことを書いたら、
「成功してよかったわね」「早い回復を祈っているわ」
などと友人たちが連絡をくれた。
「いずれ私もするから会って詳しく教えて」
というお願いもされたりしている。

やっぱり、持つべきものは友──

そう感じ入っている今日この頃のヌエコだ。

「4,5分で済む、痛くも痒くもない手術ですよ」

先生にそう言われていたものの、
ほかの体の部分を、全身麻酔で眠っているあいだに
やってもらうほうがどんなに安心だろう──

実は昨年秋に手術を薦められていたのに怖くて決められなかった。
それに、一ヵ月はラジオ体操みたいな運動もご法度だから
激しく筋肉を使って飛んだり跳ねたりするバレエは絶対禁止。
それも耐えられなかった。

ところが、4月になったら、もうアウト。
左だけがどんどん進行していた。
コンタクトを買い替えるために検眼してもらったら、
「もう矯正できません、左の白濁が酷くなっています」
とのご託宣だった。

バレエだけじゃない、仕事がある、どうしよう。。
左右のバランスが崩れているから
駅の階段の段差もつかめないし、
太陽光も照明光も左だけ異様に眩しい。

両目がお揃いでゆっくり濁っていくのなら
生活への支障はない。
手術はしなくてもよかったかもしれない。

概して彼女は、体の左側が弱い。
中耳炎がこじれて鼓膜が破れて以来、左の聴力が落ちた。
肩も左が凝るし、踊り過ぎの腰痛や膝痛も左に出る。
もしかして脳も左が弱いのだとしたら、
数字の計算やIQテストのスコアが悪いのもそのせいだ!?

とにかく、手術で普通の人間以上に目が見えるようになった。
街のブティックのウィンドーからは、奥の商品もよく見える。
遠くのビルの看板も、窓のなかもくっきり見える。
殺人事件が起きていたり、
社内不倫キスが行われていても目撃できるだろう。
森の木々も葉の一枚一枚がはっきり見える。



例えば山並みもこの写真よりはっきり見えている。

手術後のヌエコの目は、
風景をまんべんなく一様に捉えて写し撮るカメラのようなのだ。
見ている対象が一枚の鮮明な写真のようにガバツと見える。

面白いことに、夜の街の照明や行き交う車のライトの周りが
美しい光の輪をかぶっているように見える。
これは遠近両用レンズの副産物らしい。
今年はクリスマスのイリュミネーションが一段と輝いて見えるだろう。

     *      *      *

金曜の夜、ヌエコはターコさん(麻実れい)が出演している
お芝居「夜への長い旅路」を鑑賞した。




小屋は三軒茶屋のトラムシアターで、
小劇場ということもあり、東京の15回公演はほぼ完売状態だった。

術後一ヶ月経ってないし、手術は失敗することもあるし、
行くのはやめようかな──

と足踏みしていたら、7月の時点でとれたのは一番後列の席だった。

ターコさんをかぶりつきで見たいのになぁ。
そうだ、バードウオッチングの高画質双眼鏡を持って行こう!──

ところが、後ろの席からでも舞台のターコさんが
はっきりくっきり良く見えた。

なんという人工レンズの威力!──

作品は、ユージン・オニールの死後に発表され、
四度目のピューリッツアー賞受賞という名作で、
異常に荒んだ家族の救いようのない話。

わあ、ここまで落ちる家族って、ありかなぁ──

平々凡々な生活のヌエコは単純なアタマで
そんな風に考えながら観ていたのだが、
そもそも芝居というのは生身の俳優が、自分の解釈も入れて、
体と感情と言葉で演じるものだから、
最後の長台詞のあと、ターコさんが

「愛していた……、あのとき。」

と発したときの、その表情と声の抑揚に彼女のこの作品への、
こうあって欲しい、という思いが顕われていて、
あるいはヌエコはそう勝手に解釈して、非常に満足できた。
人間は「愛」、それがモンダイ、なのだ。

益岡徹(アル中の父親役)、田中圭(アル中の長男役)、
満島真之介(結核の次男役)の演技も
素晴らしかったことは言うまでもない。
ちなみにターコさんはモルヒネ中毒の母親役だ。

ここまでビョーキの家族は牋Δ了限爆弾瓩箸發い┐襪、
これはユージン・オニールの自伝的作品、なのだから泣かせる。

最後に嬉しい話。
シアタートラムのホールに
麻実れい後援会」の机が出ていたので、
「あのぉ、入会したいのですが……」と申し出ると、
「では、お名前とご住所をこちらに。申込書を郵送いたします」

やったぁ! 念願のファンクラブに入れる。
いままで、どうしたら入れるのかわからなかったのに、
これでお茶会にも行ける。
ターコさんがそばに来て、お話もできる!
クリスマスコンサートのチケットもとれる──

単細胞ミーハーのヌエコはたちまち舞い上がってしまった。





 

世界がはっきり見える歓び: ヌエコの退屈な日々

  • 2015.09.04 Friday
  • 23:45


五日ぶりに街を歩いて気付いたのだが、
ブランドもののブティックのディスプレイが
すっかり秋物に替わっている。

 

道行く女性たちはノースリーブ姿がほとんどだし、
病院帰りのヌエコもタンクトップに
スパッツ、巻きミニスカで真夏の装いなのに、
ウィンドウのマネキンたちは厚手のジャケットやコートで温かそうにしている。

 


いつも気になるジョニオさんの「UNDERCOVER」も茶や黒をベースにした秋一色。
 

ヌエコの白内障手術の経過は良好で、
施術を受けた専門クリニックでの診療は終了し、
今日は地元の眼科医院に戻っての診察だった。

 

多焦点レンズ、つまり遠近両用のレンズを入れたので、
眼鏡なしでなにもかも、遠くも近くも、驚くほどよく見える。

 

もともと強い近視のうえに白内障が左に強く出て異状に進み、
昨年秋ぐらいから左はぼーっとかすんだ状態で、
ほとんど右目だけで見ていたのだが、
あれは夢だったのかと思うほど術後は具合いがいい。

 

手術に関して、不安はあった、怖かった。
点眼で瞳孔を開き麻酔はするものの、感覚がなくなるのは目だけで
あとはすっかり覚醒している。
そこにメスが入って人工レンズを入れるのだから……。

 

──きっと失神するか、悲鳴をあげるか、暴れるかも。
──そして、わたしの目にメスがぐさっと刺さってしまうかも。

 

心配でたまらなかった。
でも、何事も起こらなかった。

 

「ほう、両目とも均等によく見えるようになりましたね」
主治医のK先生がにっこり笑っておっしゃった。

 

「ええ、ほんとうにうれしいです」
ヌエコは専門クリニックを紹介してくれたK先生に心底感謝している。(こちら→)

 

「傷口もすっかり治っていますよ」
「カサブタはないのですか?」
「粘膜ですからカサブタはできません」

 

間抜けた質問に一瞬戸惑い顔を見せた先生だが、
それでもにっこり笑顔で新しい点眼薬三種を処方してくれた。

 

「このレンズで三十年、四十年はもちますよ」
パソコンになにやら打ち込みながら先生がヌエコに微笑んだ。

 

「そんなにですか? 目だけ長生きしそうです」
先生が笑った。
「ほかの目の病気にならなければです。緑内障とか、黄斑変性症とか」

 

──うーむ、それは聞いたことがある。
──そうなったらそうなったときのことだ。

 

で、ヌエコは気になっていたことを口にした。
 

「先生、術後はいくら仕事をしても目の疲れを感じないのですが、
それは人工レンズだからですか?
つまり、人間が生まれ持っての水晶体は
遠近を見るたびに伸縮するから筋肉運動と同じで疲労する、
でも人工レンズは伸縮しないから疲れない、そういうことでしょうか?」

 

「人工レンズはある種のプラスチックですから、伸縮しません。
水晶体のように疲労はしません。
しかし目を使っての仕事は目の他の部分や
体も疲れますから、なんでも過剰はよくありません」
小学生を諭し教えるように先生が説明してくれた。
明快なお答えだ。

 

──まあ、とにかく、伸縮しないレンズなのだから、
PCや原稿を見ながら一点を見続けても近視になる心配はない。

 

伸縮しない人工レンズのヌエコは
自分が目だけロボットになったような気分で
そそくさとK先生の診察室をあとにしたのだった。

 

     *     *     *
 

帰宅してからの三時のおやつに
HIROTA」のシューアイスが待っていた。
チョコレート、ヨーグルト、カプチーノ、マンゴー、ラムレーズン。

 


 

地下鉄の表参道駅構内にショップがあり、
食べたいけれど持ち歩いていると溶けるからと、
いつも素通りしていたのだが、
術後初めて行きつけの美容院(こちら→)に行った帰り道、遠目からでも
HIROTA since 1924」と
冷凍ケースに書いてあるのが見えた。

 

──へえ、このメーカー、そんな古くからあったの?!
 

驚いたことに、ド近眼だったヌエコはいままでそこに
HIROTA since 1924」と
書いてあるのが見えていなかったのだ。

 

──わたしはこれまでいろいろなものを見ずに生きていた!!
──見るということは、知ることだというのに……。

 

そんな、単純で新鮮な感動から、
開眼した自分へのお祝いも籠めて
ヌエコは思わずシューアイスを買ってしまった。
店員さんはちゃんと持ち帰り用ドライアイスを入れてくれた。



 

バカンス・アプレ・オペラション: ヌエコの退屈な日々

  • 2015.08.28 Friday
  • 04:24

ブログ『バランシンはお好き』を始めて
この八月で二年経ちました。
よく続いたものです。

二年は長い、毎週のネタも変わり映えがしなくなる、
自分でも飽きてしまう──
リニューアルの時期かなと考えていました。

思いついたのが、文章のスタイルを変え、
書き手の語りではなく、書き手は登場人物の一人になり、
全体の世界観に客観性と広がりを持たせるために
三人称で書いてみる、ということです。

この二十二日にある手術を受けたので、
術前は片付けておくべき仕事に専念し、
術後一週間は安静にしていました。
その間、落ち着かなかったのでブログはお休み。
今日、漸く心身ともにPCに向かうエネルギーが戻って来たので
リニューアル版として『ヌエコの退屈な日々』
第一回目の執筆を試みています。

うまくいきますかどうか、まずはやってみないと。
題して「バカンス・アプレ・オペラション」。
悠悠自適、贅沢な術後生活、といったところです。

     ☆    ☆    ☆


『バカンス・アプレ・オペラション』

バレエのレッスンに行けないのがつらい。
跳んだり跳ねたり体を激しく動かすことは
一ヵ月止められている。

手術後はしばらくレッスンができないことを見越して
六ヵ月前から週一回、特別ヴァリエーション・クラスを受け、
六月からは週六日、毎日レッスンを貪欲にこなしてきたせいか、
どうにか姿勢もバレエダンサーらしくなり、
アラインメントも整って軸がとれてきたというのに。

ああ、つまらない──
引き締まってきたお尻も腹部も弛んでしまう──

安静期間が二日も過ぎるとヌエコはそわそわし始めてきた。
術後の診療に出かける以外は外出も控えている。
一週間経ったら、自宅でポアントを履いて
加減しながら緩いバーレッスンをしようと
二畳ほどだけどダンスマットも購入して部屋に敷いてある。



TMフロアの色はダークグレイのみだが、カーテンの色調にマッチしている。

メーカーの「東リ」が松山バレエ団と共同開発した
バレエ専用床材の「TMフロア」という商品で、
楽天のネットショップ「お部屋の大将」で、182冑のものを、
1m以上からなら10冀碓未巴輅犬任る。(こちら→)

バレエ解禁になるまでは
バランシンのレッスンDVD「Balanchine Essays」10巻を見直したり、
映画「ブラック・スワン」でナタリー・ポートマンの指導にあたった
メアリー・ヘレン・バウワーズの教則本『Ballet Beautiful』を参照して、
踊らなくてもバレリーナ体型になれるエクササイズを
このマットの上でゆっくりとやるつもりでいる。

そのほか、手術二週間前にバレエショップ「シルビア」に出かけて
購入したDVD「バーオソル・コレオグラフィック」も用意してある。
立ち上がらず床に座ったり寝転んだりしたまま行うエクササイズなので、
術後のリハビリには持って来い、とヌエコは考えたのだ。



ご覧の「Balanchine Essays」はピルエット&回り物編。

それにしても、欲しいものをすぐに買って満足するものの、
ただでさえ仕事で忙しいのにレッスンにも通うのだから
DVDや本は埃を被って溜まっていくばかり。
バーだって昔から持っているのに、バスタオルやシーツの
洗濯物干場になっていることのほうが多い。
彼女としては、こんなときでもないと元がとれないので張り切っている。

しかし、これらを活用するのはこの土曜日から。
一週間はやっぱり決められたとおりに安静を守ってきた。
それではいままで何をしていたのかというと、
エージェントから紹介されたアメリカの小説の原稿を読みながら、
疲れたらケーブルテレビで古い洋画を観る──
なんとも贅沢な時間を過ごしていた。

ケーブルテレビはありがたい。
洋画専門チャンネルが複数あって二十四時間の見放題。
シュワちゃんの「トータル・リコール」
少女の頃のナタリ・ポートマンがジャン・レノと共演した「レオン」
クリント・イーストウッドとメリル・ストリープの「マディソン郡の橋」etc.
昔、映画館で観た作品に遭遇すると、その時の自分の情況まで思い出されて
実に不思議で懐かしい気分に浸ることができる。

テレビだけじゃない。
ヌエコはPCでYoutubeにアクセスして愉しんでいる。
ファイルに入れてあるターコさん(麻実れい)関係の動画と資料。
可愛い動物もの、とくに猫や犬。
休み明けから踊りたいヴァリエーション探しにもYoutubeを駆使している。

体力的には「Pas de quatre」のようなゆっくりしたものがいいけど、
本人としては「エスメラルダ」や「チャイコフスキー・パ・ドウ・ドウ」みたいに
曲に癖があってインパクトの強いもののほうがやる気がでる。
「カルメン」(こちら→)や「マノン」(こちら→)ができたら最高だ。
しかし振り覚えのひどく悪い彼女には高嶺の花だし、
純粋クラシックではないから先生がノーとおっしゃるだろう。

バレエ友達は休みなくレッスンにいそしんでいるはずだ。
通っているスタジオ「Angel R」では九月に
「ドン・キホーテ」の公演をするので
出演するメンバーはリハーサルが佳境に入っているところだ。

そんなことを考えながら、術後一回目の診療のあった日の御昼どき、
スタジオとは反対方向のストリートにある
南青山の小さなカフェ「ICHO」のドアを押し開けると
ヌエコはカウンター席に座り、ミックスサラダ&トーストと、
デザートには以前から狙っていたミルクカフェのかき氷を注文した。






診療結果は「順調に回復」とのことで、
俄然食欲が出てきた彼女の口に
「ICHO」のランチとかき氷はある種の安堵感を与えてくれた。
トーストは米粉入りの自家製、かき氷の練乳も自家製、
コーヒーは自家焙煎のマンデリン。

「ICHO」は洋服のオーダーメイドの店舗のなかに
カフェが併設されているのだが、
店のここそこに趣味の良いこだわりの置物、小物などが置かれている。
京都出身の家族だけで経営しているのだと、
カウンター内で野菜を刻みながら話してくれるその女性の物腰は
いと柔らかく、たおやかで、
ヌエコの心身に癒しの時間を与えてくれるのだった。



 

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バレエ関連書籍の出版社「チャイコ」専属エディター、鵺子が仕事、バレエ、スウィーツなどについて書いています。

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