2019.08.01 Thursday

バレエ観賞の日々(5月の場合)

 

ブログが滞っている。毎日忙しくしているので

頭の中が未整理のまま、ただ時が過ぎていく。

生活記録でもあるのだから、いい加減腰を据えて認めなくては。

まず5月に観たバレエ公演やバレエ映画についてまとめてみる。

 

5月10日(金)横浜市中区のTHE HALL YOKOHAMAにて

和雅美×福田圭吾率いるバレエエンターテイメント・ユニット

DAIFUKU」による『HOME』を観た。

新国立劇場バレエ団のOB&現役を含むダンサーたちが

昭和的日本の懐かしい家族の情景・詩情を

ユーモアとペーソス漂う演出・振付で踊り描いた。

360度から観賞できる舞台構成がユニークなこのユニットは

2016年に始動して今回の公演で第5回目になるが、『HOME』では、

祖父母、父母、子供たちがひとつ電燈の下で食卓を囲んでいた、

古き良き日本を見せてくれた。くすくす笑えてウルッとくる。

わたしはこんな作品が好きだ。

 

 

25日(土)新宿文化センターで骨髄バンク主催の合同ダンス発表会。

週一レッスンを受講している豪徳寺のスタジオも参加していたので

応援に出かけたのだが、皆さん、エスメラルダやドンキや

コッペリアなどのヴァリエーションをステキな衣装で踊っていた。

人はなんで踊るのだろう、と常々わたしは考えるのだが、

行き着く答えはいつも、そりゃあ、楽しいからよ♪ なのである。

 

26日(日)新国立劇場中ホールにて

NBAバレエ団の『リトル・マーメイド』と『真夏の夜の夢』。

マーメイドを観るのは二回目、真夏はもう三回目になるが、

団員の入れ替わり、演出も少しずつ変わるから、新しい発見がある。

リトル・マーメイド』はアメリカオリジナルの作品で、

人魚が歌う唄が前回は英語だったが、今回はアメリカ人歌手同様に

美しく澄んだ声の日本の女性歌手が歌っていたので、楽しさ倍増。

ナレーション、唄ありで、下手なミュージカルよりよっぽど面白い。

なんといっても踊りはテクニシャン揃いのNBAダンサーなのだから。

 

29日(水)は日本橋TOHOシネマズにて

ボリショイ・バレエinシネマの『黄金時代』を観た。

チケットを購入してから、同タイトル作品をずいぶん前に

NHK BSプレミアムが放送したのを録画していたことに気付き、

嫌な予感がしたのだが、ピンポーン、やはり同じものだった。

公演日20161016日)もキャストも……。

とはいえ、大画面で観るのは大迫力で、この点は大満足。

 

黄金時代』の音楽はショスタコーヴィチが192930年に作曲し、

1930年初演時の台本は犖渋綫験茘瓩紡┐靴榛酩覆鯢要としていた

ソ連国立劇場当局が開催したコンクールの入賞作がベースになった。

周知のとおり、かの国は帝政が崩壊し、1917年の2月&10月革命、

1920年まで続いた内戦状態を経て、史上初の社会主義国家を樹立。

黄金時代』の内容は、皇帝ご用達の夢のようなバレエとは違い、

民衆の暮らしや新しい時代の世相を反映していた──

西側のとある資本主義国で開催された工業博覧会「黄金時代」に

ソ連のサッカークラブが招待され、選手たちは退廃的な西側文化を見聞、

現地の共産党員や労働者たちと友情を築き、労働の踊りを繰り広げる。

なんともコミンテルン色を帯びた、プロパガンダ的なストーリーだ。

 

わたしが観たのはグリゴローヴィチ振付による1982年版で、

ストーリー設定は1920年代だが、舞台はロシア南部の海辺の町。

「黄金時代」というキャバレーの美しい踊り子と若い漁師の恋に、

地元ギャングの親分が絡むという洒落た三角関係ものになっていた。

パリのファッションショーを彷彿とさせる煌びやかな衣装を纏った

ダンサーたちが、ブロードウェイミュージカルよろしく

めくるめく踊り回るキャバレー・シーンはまるで宝塚レビューのよう。

それでも時代背景を原作同様1920年代にしてある点がミソだ。

革命と内戦を経験した当時のソ連は深刻な食糧・物資不足に瀕し、

国民を疲弊から救うためにレーニン率いる新政権は窮余の策として

社会主義体制とは相矛盾する「新経済政策(ネップ)」を1921年に施行。

私的実業家を気取るギャングが幅を利かしてもいただろう。

これが、2006年にマリンスキー劇場が再演した『黄金時代』になると、

時代はまさに今、年老いた男女が昔を回想する話になっているという。

バレエは、かように時代の流れに乗って変遷しながら永らえる、

民衆のための素晴らしいエンタテイメント、だとわたしは思う。

 

 

30日(木)は新宿武蔵野館にて映画『ホワイト・クロウ』を観賞。

英ロ仏の共同制作によるルドルフ・ヌレイエフの伝記映画だが、

彼に関してわたしは読み過ぎ、観過ぎ、知り過ぎているので、

まあ、観なくてもよかったかも、というのが感想だ。

そもそも、ヌレイエフを演じたダンサーが良くない、線が細過ぎる。

ロシアの大地にすっくと立つ、ごつい農夫のような男でなくては。

その身体がバレエを踊るからヌレイエフは魅力的で輝いていたのだ。

亡命の緊迫感は、チャイコ刊『びっくりさせてよ』のほうが強烈だ。

ヌレイエフとバリシニコフを足して二で割ったような亡命ダンサー、

主人公アースランの物語。ぜひお読みください。

amazon.jpもしくはhttps://tchaiko.co.jpからどうぞ。

 

 

 


2019.05.08 Wednesday

読書三昧&西城秀樹三昧&河本蓮大朗

 

10連休のゴールデンウィークはのんびり山の家で過ごした。

雨の日もあったけど、冬場は枯れて茶色の枝ばかりだった樹々が

緑に芽吹き、早朝に見やる向こうの山肌に雲がたなびく様は清々しい。

 

 

先月スパイラルのグループ展で購入した河本蓮大朗さんの作品を

山の家のどこに飾るかで大いに悩んだが、

落ち着いたのはわたしの寝室の窓辺だった。

照明でも自然光でも金糸の輝きが白い壁に拡散して

フレームの周りに不思議なハレーションを生む。

並んだルドンの花の絵(精巧な複製画)の青紫とも調和して

眺めているだけで心が安らぐ。見飽きない。

東京の家のバルコニーに咲く大輪のクレマチスと同じ色合いだ。

 

 

TVをよく見たが、「令和」フィーバーの大騒ぎは感心しない。

元号はいまや天皇の在位期間を表わす記号と化している。

あってもいいけれど、それは皇室関係だけで使用していただき、

国民の生活レベルでは単純に西暦だけのほうが便利だし合理的だ。

わたしはもう西暦だけで暮らしていくことにしている。

中国、北朝鮮、韓国もとっくの昔に元号を廃止していて、

世界中で日本だけですよ、和暦と西暦で頭がごちゃごちゃしてるのは。

元号で時間を区切ってリセットした気分でお祭り騒ぎしても

変わらず時間は流れているのだし、何も変っちゃいない。

時間を元号で区切って思考する日本人の精神構造は、

時間を一貫した流れとして捉える国々のそれとは、

歴史への責任の在り方が異なるのでは? と思うのだが、どうだろう。

 

休暇中、仕事もバレエもしなかったものだから、柄にもなく

天皇制や元号のことを狹学瓩靴燭里世韻譴鼻△韻辰海λ椶眛匹鵑澄

なかでも『安井かずみがいた時代』(島崎今日子著/集英社/2013年刊)

面白かった。6070年代を中心に日本歌謡界に君臨した訳詞家、作詞家の

安井かずみの実像に迫る渾身のノンフィクションだ。

 

 

安井かずみには4000にのぼる作品があり、ヒット作も数多い。

このところ西城秀樹について調べていて、彼の1973年「ちぎれた愛」

1974年「激しい恋」、1975年「この愛のときめき」も彼女の作なので、

二人の関係について何か書かれているかと思って入手したのだが、

期待外れだった。当時秀樹は1819。安井は3435。その年齢差16

デビュー後1、2年の秀樹にしてみればこの売れっ子作詞家は

高嶺の紅薔薇で、彼女自身は当時、その目で見つめられると

男でさえ孕むと謳われた沢田研二にぞっこんだったそうで、

ジュリーに多くの作品を捧げていたのだった。

 

そんなこんなで、秀樹に関する情報は見つからなかったものの、

しかしこの本は、演歌中心だった日本の音楽界が欧米の影響を受けながら

歌謡 ポップス → フォーク ロックへと

変遷していく姿を覗き見ることができて興味深かった。

 

さあ、長い連休も終わり、東京に戻ってきた。

また、仕事とバレエの毎日の始まりはじまりだ。

 

 


2019.04.03 Wednesday

4月から新たな自分になる

 

あっという間に時が過ぎた。

2月は妹たちと毎週実家に集まって相続の打ち合わせ、

3月も毎週集まり遺品の整理と形見分け作業だった。

 

遺品は昨年12月に亡くなった母のものだけではない。

ものを大切にするあまり、母は処分ができない人で、

父や、おまけに舅・姑の時代のものまで残っていた。

掛け軸、陶・磁・ガラス器、和服、軍服、サーベル、書籍、論文資料、

結婚式の引出物、俳句や日記や随筆原稿の山に家計簿の束、

夥しい数と種類の記念切手や硬貨などまで──

押し入れ、物入れ、箪笥を開けるたびに三姉妹は溜め息を吐いた。

「やだ、これ、わたしが二十歳のころのワンピース!」

「みんなの通信簿や表彰状まで、どういうつもり?」

「わたしがプレゼントしたバッグ、使わないで箱に入ったままよ」

 

毎年花をつける実家の白梅。正確に時を刻まない、忘れた頃にぼ〜ん♪と鳴る実家の捩子巻き

柱時計は長女と次女で取り合いになったが最終的に次女のものに。東芝の真空管ラジオは

修理可能で長女が頂いた。

 

「ねえ、こんなのがあるわよ」

そう言って次女が見せた写真がなんだかわからず、

裏を返すと、わたしの下手な字で、アメリカの生活は楽しい、

なんて書いてある。あっ! 脳天を打たれたかのような衝撃を覚えた。

初期にお世話になった日系人のミセスとキッチンで撮ったものや

両親宛てのクリスマスカードに添えられたご家族のファミリーフォトだ。

昔すぎて、自分の顔がにわかには認識できなかったが、

あぁ、母はこれらの写真を見て長女がもう帰ってこないのではと不安に

襲われ、あの頃から体調を崩したのだとわたしは初めて悟ったのだ。

子供が男の子ふたりで女の子がいないご夫妻は、

そのカードと写真を送った頃、当時横須賀在住だった親戚を通して

わたしを養女にしたいと連絡してきたという。

長女を養子に出すわけにはいかないと、当然両親はお断わりしたのだが、

双方でそんなやり取りがあったことを後に聞かされて、わたしは動揺し、

母の精神状態を慮り、結局独り暮らしを始めることになったのだった。

 

(上の写真)カリフォルニア州レッドウッドシティでお世話になった日系家族のミセスと。

(下・左)カレッジが留学生のために企画した市内見学で訪れた地元新聞社の玄関先で社員の人と。

(下・右)写真の裏に書いた母宛ての私信。「隣のおじさんは一緒に撮ろうと言ってきたので

撮らせてあげました。可愛い女の子には目がないらしい」なんて書いてある。

 

そんなことを思い出し考えながら、漸く実家の片付けを済ませた。

両親の書き物は読まずに処分するのは憚られるのでわたしが引き受けた。

ふたりの心の中を覗くように、ゆっくり目を通すつもりだ。

 

実家に通っているうちに梅の花が散り、桜の蕾が膨らみ花開いた。

母が亡くなってからというもの、仕事への意欲が減退している。

でも踊っていると無心になれるのでバレエレッスンは続けている。

1月に始まったAngel Rの三ヵ月パ・ド・ドゥワークショップでは

ダイアナとアクティオン」をなんとかカタチにした。

いくらなんでも4月からは本作りに戻るけど

4月スタートの「黒鳥」でもスキルアップしたい。

 

(中央の写真)週一通っているルシャトンバレエ・スタジオがある豪徳寺の駅前花壇の桜。

ライトアップによく映えている。

(周囲の写真)Angel Rの佐々木淳史先生による「ダイアナとアクティオン」のWS最終日。

 

3月のマイ・バースデーに西城秀樹さんから動く写真のカードが届いた!

秀樹さんが口元に手をやっている写真に「お誕生日」の文字が映り、

カードの角度を変えると秀樹さんがこちらに手を差し出し「おめでとう」

の文字が現れる。天国の秀樹さんに代わりァンクラブが送ってくれた。

彼の誕生日は4月13日でもうすぐだ。64歳になるはずだった。

一周忌の命日が5月16日にやってくる。

 

 

命日といえば、昔の上司で元Newsweek東京支局長の

バーナード・クリッシャーさんが3月5日に亡くなった。

活字ジャーナリストとして初めて昭和天皇との単独会見を成し遂げ、

カンボジアの貧しい子供たちが教育を受けられるようにと

さまざまなかたちで慈善家として貢献してきた人だった。(こちら→)

人は生まれ、そして死んでいく。

わたしもそのうち死ぬ。身の回りを片づけなければ。

これだけは母のようであってはならない、と思うのだ。

断捨離、断捨離。

 

 



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