映画『「ボリショイ』&暗闇に光るスマホ

  • 2017.12.14 Thursday
  • 23:02

 

ロシアが自国の芸術・文化を海外へ発信することに力を入れている。

「ロシアシーズンズ(ロシアの季節)」と銘打ったプロジェクトを立ち上げ、

日本がその第一回目の開催国になった。無論、これは昨年12月に行われた

二国間首脳会議にて、安倍首相とプーチン大統領が取り決めたことによるもので、

国際政治も絡んでいる。

 

  とまれ、今年6月から「ロシアシーズンズ ジャパン2017」の

さまざまなイベントが日本各地で行われてきた。バレエ絡みが多かったが、

サーカスや、ロックバンド、エルミタージュ美術館の傑作が披露され、

コンサート、写真展、映画鑑賞会なども開催された。

 

グランドフィナーレは東京で、

この11日にマリインスキー劇場管弦楽団によるコンサート、

12日に新作映画『ボリショイ』の上映が行われた。

 

 

 映画鑑賞の招待券を頂いたので、バレエのクラスを受けてから、

シャワーも浴びずに、TOHOシネマズ 六本木ヒルズに出かけた。

 

 トークセッションが冒頭にあり、ゲストでプロデューサーの

ドミートリー・ダヴィデンコさんが語気を強めて「ハリウッドだけでなく、

ロシアでも映画を作っています。アメリカ映画より、ロシア映画を観てください」

と本音を口にしたのが微笑ましかった。

日本でも大ヒットした、ナタリー・ポートマン主演のサイコスリラー

『ブラック・スワン』に対抗しているのかと思った次第。

 

 やはりゲストで、主演女優のひとりであるアンナ・イサーエワさんは、

ご自身もボリショイバレエ学校を優秀な成績で卒業しているので、

ナビゲーターから「映画に描かれていることはリアルですか?」と訊かれ、

「現実と映画はリアルにリンクしています。監督には大いに感謝しています」

と率直なお応えで好感が持てた。

なにしろ、独断的なキャスティングで反感を買っていた芸術監督が

男性ソリストから顔に硫酸を浴びせられるという事件が2013年に起きた、

あのボリショイなのだ。映画でもバレエ団の内幕、怨念渦巻く人間ドラマを

見ることができるのかと、期待がいや増した次第。

 

 開けてみると、いい意味で期待を裏切られた。

『ブラック・スワン』や硫酸事件のようなエグさはない。

生徒たちが切磋琢磨し、あるいは脱落していく姿が青春ドラマとして描かれ、

幸運にもバレエ団員に採用された者同士の心の揺れ、嫉妬、裏切り、

そして恋、友情が浮き彫りになっている。

 

 パ・ド・ドゥのレッスン中、男子から落とされてしまったり、

どうも息が合わないでいるシーンもあって、とても参考になった。

わたしは目下、パ・ド・ドゥのお稽古に余念がないのだ。

2014年にパリ・オペラ座のエトワールを引退したニコラ・ル・リッシュが

エトワール役で出演しているのも嬉しく懐かしい。

渋い佇まいが好きで、贔屓にしていたのだ。

 

 部外者をシャットアウトしているバレエ学校や劇場内での撮影シーンも多く、

これは貴重な情報になった。恒例のモスクワ国際バレエコンクールは

この劇場で行われるが、編集を担当した『日本バレエを変える』(チャイコ刊には

著者の久保綋一さんが16歳のときにここで踊って銀を獲ったという件があり、

劇場の外観、内部がスクリーンに映し出されたときには感慨深かった。

外国人初のボリショイ第一ソリストだった岩田守弘さんのことも脳裏に浮かんだ。

 

 バレエ学校の生徒たち(特に女子)は成長過程において体型に変化が生じると

退学を余儀なくさせられるという話を聞いているが、そのエピソードもあって、

リアルに描かれているという触れ込みだけに、キビシー! と恐れ入ってしまう。

バストもヒップも実ってはいけないのだ。

 

 子供の頃から延々と続くストイックな修業期間を終え、

晴れて有給の団員となり、バレエ団で踊り続ければ、

ロシアのダンサーたちは30代で年金生活に入れる──

これは冒頭のトークセッションで話題になったことだが、知ってはいても、

実際に関係者の口から耳にすると、なんだかな〜、日本とは大違いだな〜、

と再確認させられる。我が国のプロダンサーたちのおおかたは、

現役のときから公演の合間を縫ってバレエ教師の仕事をし、

(特に男子は希少価値だから)日本中に乱立している巷のバレエスタジオの発表会に

ゲスト出演して糊口を凌ぐ。退団後の生活は、推して知るべしだ。

 

『ボリショイ』を観ながら、もうひとつ感じ入ることがあった。

この映画には前出のアンナさんの他に、ユリアという名の

もうひとりの主人公がいるのだが、ユリアは地方の片田舎の貧しい家の娘で、

家族の暮らしを助けるためにボリショイに入団しようと努力し、志を果たす。

だが、とある事情でプリマの座を一度は断念することになってしまうのだ

(ちなみに、アンナさん演じる主人公はモスクワの富裕な家庭の娘という設定)。

 

 ロシアのダンサーが登場する映画には、この“貧困家庭”パターンが多い。

東京では秋に公開されたフランス映画『ポリーナ、私を踊る』の主人公も

ボリショイを目指すロシア人の少女で、彼女の家も貧しい。

夏に観た英・米映画『ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣』は、

キエフ国立バレエ学校、英国ロイヤル・バレエスクールを経て、

ロイヤル・バレエ団の大スターになった天才ポルーニン(こちら→)

実像に迫ったドキュメンタリーだったが、

ロシアではなくウクライナ出身の彼もやはり貧しい家庭環境にあった。

逆境を乗り越え、目標に向かうところに、才能が開花する──

常套なストーリーラインだが、これがあちらでは現実だから物語になる。

 

 翻って、日本のバレエ界を映画にするならば、それほどの貧困層はなく、

中途半端にぬくぬくした社会だから、足りない分はアルバイトで補えて、

30代で年金生活者になれるような条件のいい国立バレエ団は不在なので、

そこに入ること自体を目標にして上を目指す動機も生まれず、

踊りたいから踊れる限りは踊って暮らす、あとは野となれ山となれ──

差詰めそんな若者たちについてのストーリーになるのだろうか。

温過ぎる。締まりがない。ドラマがない。キャッチのない映画だ。

 

 余談だが、最後に言っておきたいことがある。

会場でわたしの右隣に坐っていた女性が、上映半ばからスマホをいじり始めた。

消音にしてあるのだろうが、暗闇で視野内に液晶の眩しい光があると、

煩わしくて、鬱陶しくて、映画鑑賞の邪魔になる。

1分ほど右手で右目側に壁を作って光が見えないようにしていたのだが、

なんでわたしがそんな恰好をして映画を観なくてはならないのかと頭に来て、

「ねえ、それ、光が目に痛いんだけど」と小声で伝えたら、

彼女は「ああ、すいません」と言ってにやけてからオフにした。

映画が自分のタイプじゃない、あるいは急いで連絡する必要があるのなら、

中座すればいいじゃないか。上映中でなければ怒鳴るところだ。

このバカ女、まさかバレエをやっている人じゃないでしょうね!

 

映画館を出て、ヒルズの66プラザに来ると、400個のバイブラランプで作られたクリスマスツリーが、

フィラメントの柔らかい光を揺らしながら夜のなかでたおやかに輝いていた。

 

 

 

 

松山バレエ団「白毛女」に思う

  • 2017.11.10 Friday
  • 04:37

 

9日夜、Bunkamuraオーチャードホールで松山バレエ団による

日中国交正常化45周年記念「新『白毛女』」を観た。

昔から「白毛女」のことは知っていたが、

公演を観る機会がなく、今回はどうしてもとお思い立ったのだ。

 

清水正夫・松山樹子夫妻が同名の中国映画やオペラを基に創作した

日本人によるオリジナル・グランドバレエで、初演は1955だった。

貧農の乙女が地主階級に立ち向かって苦悩の日々を重ねた末、

白髪になりながらも、世の中を変えていくというストーリーだが、

当時の資料写真で見る、主役の松山樹子さんの挑戦的かつ肉感的な

アラベスクポーズが素晴らしい。

1971年からは森下洋子さんが主役を踊っているが、

若い頃の洋子さんを私は見逃しているので、それが悔やまれる。

 

今回のバージョンは構想・構成・台本・演出・振付が

清水哲太郎氏によるもので、タイトルに「新」が付いている。

以前のバージョンを観ていないので、違いがわからないのだが、

乙女が農村の粗末な家から登場する冒頭シーンは「ジゼル」を思わせ、

大勢の白毛女たちが白い世界で踊る群舞のシーンには

やはり「ジゼル」、そして「白鳥の湖」にも通ずる美しさがある。

だが、音楽、衣装、振付、物語は西洋の物真似ではない。

それがいい。既視感がなく、新鮮に感じられるのだ。

フォーマットとしてのクラシックバレエの伝統を踏まえた、

真の意味での日本のオリジナル・バレエを観たい──

最近の私にはそういう欲求があるので、

日中友好の枠を外したとしても、これは見応えのある作品だった。

 

第二幕が始まる前に、二階のボックス席に美智子皇后陛下が現れ、

会場に拍手の嵐が起こり、対面のボックス席で報道カメラマンの

フラッシュが焚かれたのでびっくり、と同時に、

「まあ、すてき!」と感動してしまった。

清水哲太郎氏が横に坐っていた、とあとで知った。

そういえば、美智子さまも美しい“白毛女”だ。

長い間、ご苦労様でしたと申し上げたい。

 

外に出ると、東急百貨店前のクリスマスツリーが輝いていた。

私の大好きなイリュミネーションの季節の到来だ。

今年もあと2カ月を切った。

 

 

渋谷駅までの途中、いいものを観た興奮を冷ますために

オーチャードのあとでいつも入るカフェに寄り、

ココアパウダーがかかったソフトクリームをいただいた。

中国語が周囲で聞えていた。彼らもオーチャード帰りなのだろう。

 

「新・白毛女」のプログラム裏表紙の森下洋子さん&ソフトクリーム

テッドと「クレオパトラ」

  • 2017.10.15 Sunday
  • 21:59

 

我が家にテディベアが来た。

人気アメリカ映画「テッド」「テッド2」の

主役キャラクターだ。

 

テッドと「ted 2」のDVD

 

映画のテッドは縫いぐるみなのに生きていて、

お酒も飲み、マリファナも吸う中年オヤジだが、

我が家のテッドは左掌を押すと映画と同じ英語のオヤジ声で喋るだけ。

それ以外はふつうの縫いぐるみなので安心していられる。

弛んだ出っ腹、「へ」の字眉のテッドを見ていると気持ちが和む。

 

熊といえば、テディの愛称で知られる

熊川哲也さん率いるKバレエの「クレオパトラ」を観た。

電車の吊り広告で中村祥子さんが左脚を体側に沿わせて

頭の高さを超えてほぼ垂直上げしている

写真に魅せられてしまったのだ。

 

 

祥子さんの美しい肢体のせいだけではない。

Kバレエの「クレオパトラ」は

ストーリーの創作、音楽の発掘、振付、のすべてが熊川さんによる

オリジナル・世界初演・全幕作品・グランドバレエということで

ぜひともそのお手並み、出来栄え拝見という気持ちもあった。

 

席は後方エリア、ほぼ中央で、ステージ全体を臨めるS席だったが、

まず、現代アートのような斬新かつ無駄のない舞台美術に圧倒された。

「ファラオの娘」のようなお決まりのエジプト調ではないのだ。

 

古代エジプトの女王クレオパトラと

共和制ローマを形作るカエサルを始めとする政治家・軍人たちとの

愛、セックス、陰謀、殺略があやなす独自の「クレオパトラ」を

熊川哲也芸術監督がどのようにバレエで見せるのか。

観客としての興味と好奇心はひとえにそこにあった──

 

非常に演劇的で衝撃的な作品である。

それは、神秘的に妖しいイントロと、

息をのむエンディングの2シーンに顕れていると言っても過言ではない。

いい意味での“外連味(けれんみ)”が計算されているのだろう。

もしかしたら熊川さんは、この作品で全世界に向けて、

歌舞伎でいうところの“見得(みえ)”を切ったのかもしれない。

入り組んだ人間関係を観客に伝えなくてはならないので

ダンサーには、踊るだけでなく、役を演じることも強く要求されている。

私感だが、見ててもいいのかなあ、

ピーピング・トムみたいだなあ、という気持ちにさせられるほどの

めくるめく官能的な動きが振付に込められていたりもする──。

正直に言おう。

「クレオパトラ」を観て、バレエ研究における課題がひとつ増えた。

ずばり、《バレエにおけるセクシュアリティ》である。

 

願わくば、熊川版「クレオパトラ」が海外に呼ばれたり、

各国のバレエ団によって上演されるようになってもらいたい。

そのときこそが、真のメイドインジャパンのグランドバレエ誕生なのだ。

日本公演はまだまだ続く。

せっかくだから《バレエにおけるセクシュアリティ》のお勉強も兼ねて

浅川紫織さんがクレオパトラを演じる日にも観に行くつもりでいる。

 

 

今更ですが、スマホってやっぱり便利

  • 2017.10.06 Friday
  • 23:56

 

母の具合が悪い。

8月に入院し、9月に退院したが

病院にいる間は寝ている時間が長くて脚が萎え

歩行困難になって家に戻ってきた。

普通食は喉に詰まるので、食事は

柔らかいものや水分の多いものに変わった。

誤嚥や嚥下ミス防止のため、

三度の食事のたびに真ん中の妹が見守りをしてくれている。

現代の日本の老人は、そうやって入退院を繰り返し、

自立力を失くし、寝たきりになり、そして冥途へ旅発つ。

 

母のことで心が落ち着かない日々を過ごしながら

よせばいいのに、WiMAXルーターの2年縛りが解けるのを機に

思い切って、携帯電話をルーター兼用できるスマホに変えた。

古い携帯は9年も愛用した爛ラケイ瓩

テレビを視聴できる、国際電話も掛けられるというので購入した。

思い出がたくさん詰まっている愛機だ。

捨てられないので今は目覚まし時計として枕元に置いている。

 

スマホとガラケイ

 

スマホはSONYのExperia XZにした。

使い方を覚えるのが面倒だったが、慣れればなるほど便利で面白い。

意固地になってずっとガラケイを愛してきたが、

スマホは様々な機能が入っているので荷物が軽くなった。

 

いままではいつもリュックやバッグに計6個の機器を入れていた。

バレエ音楽を聴くためのWalkman

Youtubeのバレエ画面を直撮した動画を見るためのHandycam、

いつでも写真を撮れるようにとCybershot、Lineをするための

シム無しiPadもどきWiMAXを契約したときにタダでもらった)、

そのもどき用の電波を拾うためのルーター、そしてガラパゴス。

〆て総重量1.35圓世辰燭里、今は225gのスマホだけでOKなのだ。

 

オールドガジットたち

 

でもビデオカメラは今後、ミニ映画を作りたいから処分しないでおこう。

デジタルカメラは、じっくり考えた写真を撮るにはやはり必要だからキープ。

スマホに音楽を入れはするけれど、バッテリー節約したいからWalkmanも必携。

これらはSONY製品で、要するに私はSONYフリークなのだ。

だからどうしても捨てられない。

 

最後に夏の思い出のかき氷をご紹介──

 

 

南青山5丁目のヨックモックで9月末までやっていた

四代目徳次郎「日光天然の氷」の抹茶+練乳+小豆味。

時間をかけて凍らせた透明度の高い硬い氷が、

削られるとふわふわした雪のような口当たりになる。

暑い日差しのなかを歩き回ったあとの昼下がり、

ほっと幸せな溜め息を吐いてからいただいた。

生きていたらまた来年も食べよう。

 

 

 

NBAバレエ団「HIBARI」のパワーアップ

  • 2017.09.04 Monday
  • 14:54

 

先週末、2日土曜の昼、凄くいいものを観た。

池袋の東京芸術劇場で上演されていたNBAバレエ団の

HIBARI」だ(公演は2日と3日で計三回)。

 

 

敗戦から立ち直る日本に寄り添って歌い続けた国民歌手

美空ひばりの生涯を歌、写真、動画、ナレーション、

そしてバレエでスタイリッシュに組み立てた作品で、

2015年の初演時に好評だったが、それがさらに磨き上げられていたのだ。

 

アメリカのミュージカル、演劇、映画、バレエ界に

作品を提供し続けている大御所リン・テイラー・コーベットによる振付で、

彼女は再演にあたって細やかな手直しを施したという。

そのせいなのだろう、単なる再演ものではなく、既視感がありながら

まるで新しい作品を観ているような奇妙な錯覚にとらわれた。

 

しかしその不思議な感覚の一番大きな要素がダンサーたちの

テクニックと表現力のパワーアップにあるのは明らかだ。

新しいダンサーが増えていたし、

プリンシパル、ソリスト、アーティストとランク付けされているうち、

アーティストレベルの若手の躍進が目立つ。

これは、上のランクや、下に控えるダンサーたちに

良い意味でのコンペティティブな刺激を与えているはずだ。

バレエ団の狒度瓩保たれ、有機的に機能している証拠だろう。

 

 

振付家は、美空ひばりを研究し尽くしたうえで、

日本の芸能から得た知識を咀嚼し、

ハイセンスなバレエ・ア・ラ・ジャポンを作り上げている。

それは例えば、何でもない一枚の黒い布の使い方にも顕れており、

黒装束の男性ダンサー(皆川知宏/森田維央)を黒子に従え、

美空ひばりの切々とした歌声に包まれながら

関口祐美がソロで踊る「悲しい酒」はその代表例だ。

決して他人には見せなかったであろうひばりの心情が

バレエで具現化されていて、観る者の胸を締め付ける。

 

併演の「The River」はアルヴィン・エイリー振付、

デューク・エリントン作曲によるアメリカンバレエの傑作。

ダンサーに超高度なテクニックを要求するこの作品を

NBAが日本初演したこと自体がまず賞賛に値する。

 

 

芸術監督・久保綋一著『日本バレエを変える(チャイコ刊)

でも紹介されているが(P.130-131参照)、「The River」は

元々アメリカン・バレエ・シアター(ABT)のために1970年に作られた。

そのうちのパ・ド・ドゥ〈Giggling Rapids〉を

ミハエル・バリシニコフとナタリア・マカロヴァが踊り、

それをコロラド・バレエ団時代に久保も踊っている。

ミーシャとレスリー・ブラウン(当時ABTのソリスト)が共演した

映画「愛と喝采の日々」(1977年)でレスリーがソロ〈Vortex〉を

魅力的に踊っていたのが印象深い。

 

そんなこんなで、さてNBAダンサーたちが「The River」を

どう踊りこなすかと大いに関心があったのだが、

嬉々、溌剌として踊る彼らは、素晴らしい! の一言に尽きる。

気になっていた〈Vortex〉は勅使河原綾乃(ランクはアーティスト)だったが、

この人はこんなにシャープな踊り方をするテクニシャンだったのかと

びっくり仰天、瞠目のパフォーマンスを見せてくれた。

私感ではレスリーをはるかに超えていた。

 

BAのダンサーたちは公演を重ねるごとに進化し続けている。

彼らが日本のバレエ、いや、バレエそのものを変えていく、

そんな道筋が見えているように思うのだ。

 

(気になる座席:

友人が日曜にSS席の最前列ほぼ中央で観たというので念のために訊いてみたが、

ダンサーの足はポアントの先まで見えたとのことで安心した。そうでなくちゃ)

 

 

腹が立った「Ballet Supreme」: 8月に思う その

  • 2017.08.29 Tuesday
  • 17:42

 

嫌な思いをした。

一カ月ほどぐちゃぐちゃ考えて怒りが冷めてきたので

書いて吐き出して再出発することにしよう。

以下、その嫌な思いについて──

 

パリ・オペラ座バレエ&英国ロイヤル・バレエの

スターたちが共演する公演「Ballet Supreme」のチケットを

訳あって知り合いから譲り受け、726日のAプログラムを

文京シビックホールで観た。ここ数年、

日本のバレエ団ばかり観ていたので、

外国勢はどうなっているのかチェックしたかったし

座席が前から2列目中央だということもあった。

S席19,000円、いいお値段だが、入手しにくい人気の公演だから

さぞや見応えあるだろうと期待したのだった。

 

ところが、着席して驚いた。

そこは本来オーケストラピットのエリアでステージに近過ぎる。

水平に見やる目の前は茶色い板塀。

2時間強の公演中、頭を後ろに反らし、目線を45度上げ、

坐ったまま背伸びをしていなくてはならない。

 

ダンサーたちが踊り始めると、イライラしてきた。

彼らが前のほうに出てこないと美しい足元、

トウシューズの爪先も見えないのだ。

ダンサーがステージ中央にいると脛(すね)から下が見えない。

もっと奥に行くと膝から下が見えない。

「白鳥の湖」三幕よりパ・ド・ドゥで黒鳥が最奥から

グラン・フェッテ・アン・トゥルナンをしながら

前進してくるのだが、初っ端はウエストから上しか見えない。

おまけに、その日の黒鳥は標準とされている32回をまわらなかった。

パリ・オペのエトワールだが、バレエ団がNY公演後の来日で、

東京公演初日だったため、疲れていたのかもしれない。

他のパリ・オペのダンサーたちも精彩に欠けていた。

 

オケピを潰した前過ぎる席の欠点は他にもある。

踊り終えたダンサーが拍手喝采に応えて

最前線まで出てきてくれるのはありがたいが、

そのときの彼らは顔も体も汗だらだらで、

ハーハーという音が聞こえるほどに呼吸が荒い。

美しくあるべきバレエでそういうのは見たくない。

主役を踊っていた男性が一旦袖に引っ込み、再登場し、後ろを向くと

黒タイツのお尻に白い粉みたいなのが付着しているのも丸見えだ。

クリーム色に金銀ラメのオールインワン・レオタード姿の

男性ダンサーが目の前に立ったときには何だか気持ち悪くなった。

 

何が言いたいのかというと──

こういう席は見たいものが見えず、見なくていいものが見えてしまう。

生身の人間が描く“動く芸術的絵画”全体を観ることができないのだ。

これは本当の意味でのバレエ鑑賞ではない。

美しい体で懸命に踊るダンサーたちも、一部の観客の目には

自分たちの体が切れているとは思いもよらないだろう。

作品を創った振付家にも失礼というものだ。

 

終演後、ロビーで公演関係者の男性を見かけたので

「酷い席でしたわ」と話しかけたら、

「ここはまだ良い方ですよ。東京文化会館はもっと酷いです。

バレエの好きな方は嫌でしょうけど」とのご託宣。

これにも驚いた。バレエを観に来るのはバレエ好きばかりではなく、

違うものを観にくる人もいるということなのだろう。

人それぞれだからいいのだが、オーミステイク! だったにせよ

自分がそういう席に座ったというのが情けなくて嫌なのだ。

 

それにしても、オケピの空間を使った席がなぜ19,000円もするのか?

ありていに言えば客席を増やして収益を上げるためだろう。

それに、そんな席でも19,000円を払う客がいるからだ。

主催者によってはそういう席はA席にして安くするところもあると聞く。

それがあるべきかたち、だと思う。

 

後味が悪いので、すっきりほろ酔いできるかき氷をご紹介。

 

 

6月にオープンしたGINZA SIXの地下2Fにある

ワインショップ・エノテカの「グラス・ピレ」。

グラスglace 仏語で氷の意)をピレpiler 仏語で削るの意)して

ワインベースのシロップがかかっている。

ロゼ(ベリー味)とブラン(ミント味)があってとても爽やか。

7月末で終了予定だったが、好評につき8月末までやっているそうだ。

 

 

 

calendar

S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
<< December 2017 >>

(株)チャイコのHP

(株)チャイコのHP

このブログについて

バレエ関連書籍の出版社「チャイコ」専属エディター、鵺子が仕事、バレエ、スウィーツなどについて書いています。

著者プロフィール

profilephoto

チャイコの本


NYタイムズ紙から絶賛され、
アメリカで20年踊り続けた
天才ダンサー・久保綋一の
新たな挑戦とは?
前代未聞の半生記(DVD付き)
公式ショップにて発売中!


アンセムの物語、後編!
地面が崩れ、摩天楼が沈む!
不気味なテロ集団から
「スーパーバレリーナ」は
シティを救えるのか?
公式ショップにて発売中!


一度死に、鼓動600回/分の
心臓でよみがえった
バレリーナが空を飛び、
弾丸のように走り、悪と闘う!
公式ショップにて発売中!


神と謳われた天才振付家
その神の創造力を喚起した女神
これは二人の真実の愛の物語
日本図書館協会選定図書
公式ショップにて発売中!

selected entries

categories

archives

recent comment

PR

others

mobile

qrcode

powered by

無料ブログ作成サービス JUGEM